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とある少女の交際体験【オトメゲープレイ】 アンジェレネリーク 1:はじめからなんだよ ⇒2:つづきからなんだよ『どのファイルをロードするのかな?』 1:白井ルート プレイ時間 000:03:48 白井『明日はいよいよ…わたくしとお姉様の結婚披露宴ですわね……』 2:『プレイデータがないんだよ』 3:一方通行ルート プレイ時間 179:21:55 一方通行『勘違いすンじゃねェぞ!! べ、別にテメェの為に弁当作ってきたわけじゃないンだからねっ!!!』 ⇒4:『タイトル画面にもどるんだよ』 ⇒1:はじめからなんだよ 2:つづきからなんだよインデックス『私はこのゲームの案内人のインデックス。よろしくね。 さっそくだけど、このゲームについて説明するけど、いいかな?』 1:是非聞かせて! こういうのって初めてだから…… ⇒2:説明なんていらないわよ。私は早くゲームがしたいの! 3:ゲームよりも、アンタが何者なのかが知りたいわインデックス『むぅ…私のいる意味がないかも……まぁいいや、それじゃあ次の9人から一人を選んでほしいんだよ』 ⇒1:上条当麻 好感度初期値 60% 絶対難易度(レベル6) 『……へ!? お、俺か!!?』 2:一方通行 好感度初期値 0% 大難易度(レベル4) 『ハッ! テメェなンざこっちから願い下げだァ!』 3:浜面仕上 好感度初期値 10% 強難易度(レベル3) 『ま、まぁ俺には滝壺がいるしな』 4:土御門元春 好感度初期値 25% 異難易度(レベル2) 『んー残念だぜい。可愛い娘とデートできるチャンスだったんだけどにゃー』 5:青髪ピアス 好感度初期値 100% 無難易度(レベル0) 『な~ん~で~や~~~!!! この世でボク以上に女の子を大切にする男はあらへんよ!!?』 6:海原光貴 好感度初期値 98% 低難易度(レベル1) 『…やはり…自分では貴方の心を射止めることはできないようですね……』 7:削板軍覇 好感度初期値 30% 超難易度(レベル5) 『根性が足りんな!!!』 8:白井黒子 好感度初期値 120% 無難易度(レベル0) 『お姉ぇぇぇぇ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ(泣)』 9:上条刀夜 好感度初期値 45% 低難易度(レベル1) 『良かったような…残念だったような……あっ! ち、違うんだ母さん!! 今のは―――』インデックス『ふ~ん…やっぱりとうまを選ぶんだね……いいよもう!! とっとと季節とシチュエーション選べば!?』 1:春 ⇒2:夏 3:秋 4:冬 1:夏はやっぱり海水浴よね! ⇒2:夏祭りとかいいかも! 花火大会もあるし! 3:山にキャンプとか行きたいな~ 4:しょうがない…アイツの夏休みの宿題でも手伝ってやりますか! 5:絶対能力進化実験に決まってンだろォが三下ァァァ!!!インデックス『とうまと夏祭り……う、羨ましくなんかないんだよ!! いいから行ってくれば!?』 美琴『夏祭りどうしよう…初春さんと黒子は風紀委員で忙しいし、佐天さんと春上さんも都合が悪いみたいだし……』 ⇒1:ア、アイツでも誘ってみようかな!? 2:一人で行こっかな~ 3:さすがに中止よね……美琴『アイツに……』 ⇒1:電話する 2:直接会いに行く 3:精神操作しちゃうゾ☆上条『はい、もしもし?』美琴 1:美琴だけど…え、えっと……最近どうよ…? ⇒2:ど、ど、ど、どうしてもって言うならおお、お祭り一緒に行ってあげてもいいけど!!? 3:お祭りに行きたいんだけど友達みんな都合が悪くてだから中止も考えたんだけど浴衣とか買っちゃったし でもさすがに一人で行くのはアレだと思って他に行けそうな人100人くらいに電話したんだけど結局ダメだったから 一番最後にたいして一緒にいたくもないアンタのところに電話してみたんだけど一緒にお祭り行かない!!? 4:もしもしお婆ちゃん? オレだよオレ上条『お、おう美琴か…要は夏祭りを一緒に回りたいってことだな? いいよ別に。俺ヒマだし』美琴 1:じゃ、じゃあ待ってるから! ⇒2:お、遅れんじゃないわよ! 3:それではお待ちしております、とミサカはドキがムネムネするのを必死で抑えます 4:なァンてなァァ!! 本当にそンな事言うと思ったかァ!? 残念だったなァ三下ァァァ!!!上条『分かってるよ。じゃーなー』美琴『ど、どうしよう……本当に誘っちゃった……と、とりあえず何着てこう……』 1:ま、ウチは制服着用が義務付けられてるから関係ないか 2:せっかくだから私服着てっちゃおっかな♪ ⇒3:ここはやっぱり浴衣っしょ!! 4:ついにエロメイド服を着る時が来たのよ……美琴『こんな時の為に買っておいたのよね』 1:花柄で可愛いヤツ 2:紺色で無地の大人っぽいヤツ ⇒3:ゲコ太柄の浴衣で勝負よ!!! ――― 待ち合わせ場所 ―――美琴 1:おっそいわよ!! 結局遅刻してんじゃない!! 2:ごめ~ん 待った~? ⇒3:時間ピッタリね。アンタにしてはまぁまぁなほうじゃない上条『そりゃ遅れたら後が怖いからな……』美琴 1:…何か言った? 2:それよりどう? この浴衣可愛いでしょ! 3:てかこの浴衣可愛くない? ⇒4:私的にはこの浴衣かなり気に入ってるんだけど…アンタはどう思う? 5:浴衣どォだって聞いてンだろォがァァ!! 何とか言ったらどォなンだよ三下ァァァ!!!上条『あー…うん……生地が綺麗で、きっとお高いんだろうなーって思う…』美琴 1:でしょ!? その上このゲコ太の部分がよくできてて――― 2:そんなに高いモンじゃないわよ。むしろこのゲコ太の――― ⇒3:分かってないわね~。この浴衣の良さは生地がどうこうじゃなくてゲコ太の―――上条『そ、それより屋台回ろうぜ! ほら、花火まで時間あるし!』美琴 ⇒1:それもそうね 2:…まだまだゲコ太の魅力を語り尽くせてないんだけど……上条『まずはどこ行こっか』美琴 ⇒1:とりあえず何か食べない? 2:イベント系がいいな 3:お面買いたい!上条『そうだな』美琴 1:やっぱり定番の焼きそばよね 2:串ステーキだって! おいしそう! 3:今川焼き食べたいな ⇒4:カキ氷でしょ! 5:あ…ガラナ青汁の屋台がある……上条『俺はコーラにしようかな。美琴は何味?』美琴 1:…アンタと同じ 2:ブルーハワイ ⇒3:ラムネ味。ちょっと珍しいから買ってみた 4:…イチかバチか…いちごおでん味…… 5:結局サバ味にしたって訳よ!上条『へぇー…一口もらってもいいか?』美琴 1:ふぇっ!!? で、でもこれ食べかけだし…… ⇒2:い、いいけど……その代わり私もアンタの食べていい…? 3:それって食べさせあいっこしたいって事!?ってミサカはミサカはときめきながらお口をあーんって開けてみる!上条『いいよ。ほら口開けて』美琴 ⇒1:………ふにゃー 2:………ふにゅー 3:………ふにょー上条『何で!!?』 上条『さてと、次はどうすっか』美琴 1:とりあえず何か食べない? ⇒2:イベント系がいいな 3:お面買いたい!上条『いいね』美琴 1:射的やりたい! 私得意なんだよね~♪ 2:金魚すくいで勝負よ! ⇒3:宇宙くじって本当に当たるのかしら? 4:お化け屋敷なんてのもあるんだ…行ってみない? 5:麦野沈利の人体切断マジック……激しくイヤな予感がするわね上条『不幸な俺にくじ引きって……300円無駄にするだけじゃねぇか……』美琴 ⇒1:まぁまぁ、こういうのは雰囲気を楽しむモンだから 2:どのみち何が当たっても、大した景品ないじゃない 3:文句があンなら帰りやがれ三下ァァァ!!!上条『ま、そうかもな。で、美琴は何等だったんだ?』美琴 1:2等。そこの大きいネコのヌイグルミもらおうかな 2:5等か……じゃあ吹き戻しでももらおうかな ⇒3:4等だって。アンタは? 4:特等……マリアン製サンドリヨンテーブルが当たっちゃった……上条『…白紙だ……』美琴 ⇒1:逆にすごくない!? 2:…アンタの引きの悪さも相当なモノね…… 3:大丈夫。私はそんなかみじょうを応援してる上条『…っと、そろそろ花火の時間なんじゃないか?』美琴『そうね』 1:せっかくだから近くで見ようよ! ⇒2:人混みから離れて…二人でゆっくり見ない…?上条『えっ!? い、いや、まぁ、いいけど……』美琴 1:結構遠いのに迫力あるのね ⇒2:見て見て! すっごい綺麗!! 3:た~~まや~~~~!!! 4:か~~ぎや~~~~!!! 5:そ~~げぶ~~~~!!!上条『…美琴のが……綺麗だよ…………』美琴『え………』 美琴 ⇒1:い、今のって…その…どういう意味…? 2:な、なな、なに急に馬鹿なこと言ってんのよアンタは!!! 3:…嬉しい……上条『…だから……そのままの意味だよ……』美琴 1:そ、それって…つまり……私のこと…? 2:こんなに嬉しい事が…あってもいいのかな…… 3:私も! 私もアンタのことが!! 4:…ちゃんと言って…? 5:当、麻……君……… 6:[行動]手を握る ⇒7:[行動]肩に寄りかかる 8:[行動]涙を流す 9:……という夢を見た上条『!!! 美琴!?』美琴 (※ここでは『1』以外の選択肢はありません) ⇒1:……好き上条『…そっか……やっぱりそうだったのか……… でも…駄目なんだ……俺は……美琴の気持ちに…応えてあげることができない……』美琴『……え…………』上条『俺は…俺は……… どうしてもゲコ太を好きにはなれないんだ』美琴『………………………へ?』上条『そりゃ美琴は女の子だからいいかもしれないけど、俺高一の男子だぞ。さすがに無理だって』美琴 1:??? えっと…何の話? ⇒2:ゲコ…太…? 3:ちょっと…意味が分かんないんだけど…… 4:なになに? どういうこと? 5:一から説明してくれる…?上条『いやだから、その浴衣の柄だよ。好きなんだろ?』美琴 1:いやいやいや! いつからそんな話してた!? 2:それオープニングの会話でしょうが!! ⇒3:ちょっと待って! じゃあさっき綺麗だって言ってたのは!? 4:何が何だかわからない………… 5:は…ははは……はは…は……上条『だから、その浴衣の生地だよ。最初に言わなかったか?』美琴『………………………』上条『あれ…? どうしたのでせう…?』美琴 1:[行動]ぶん殴る 2:[行動]蹴り飛ばす 3:[行動]雷撃の槍 4:[行動]砂鉄の剣 5:[行動]超電磁砲 ⇒6:[行動] 全 部上条『えっ!? ちょ、美琴さん!? ワタクシが何か気に障ることでも……って危ね!!! チクショー!!! 結局最後はこれかよ!!! 不幸ーだーーー!!!』 B A D E N Dインデックス『とうまはやっぱりとうまなんだよ………』
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End of lover relation 「ア、アンタ…それ、本気で…言ってるの?」 大雨の振る中、美琴は震えたような声で上条に尋ねた。 ここは美琴がいつも上条を探したり、自販機を蹴ったりしていた美琴にとって思い出深い公園。 今この公園には美琴と上条だけしかおらず雨音しか聞こえない。 そして上条は美琴の問いかけに対し「ああ、本気だよ。今日で俺とお前の恋人関係は……終わりだ。」 静かにそう告げた。美琴にはその声がいつもより低く、冷たい声のように感じた。 上条は傘をさしているため顔は隠れておりどんな表情をしているのかはわからない。 この日の夜空に星が見えることはなく、土砂降りの雨は止みそうにもなかった―――◇ ◇ ◇『美琴、今日遊園地に行かないか?』「はい?」 この日の朝、学校に行く準備をしている最中の美琴に一本の電話がかかってきた。 電話の相手は大好きな彼氏、上条当麻。朝から上条と会話ができるとなると嬉しくて仕方がない。それに最近は中々会えていないので嬉しさは倍増する。 現在美琴は高校3年生、上条と想いが結ばれてすでに3年が経っていた。「えっと……電話してくれるのはすっごい嬉しいんだけどさ、もう1回言ってくれない?」『だから遊園地行こうぜ!遊園地!』 電話といってもお互いに少しでも顔が見たいということでいつもテレビ電話で会話をしている。12インチの小さなテレビには嬉しそうな表情の上条が映っていた。 そして上条は持っていた財布から遊園地のペアチケットを取り出して嬉しそうに見せてきた。『ほら、ちゃんとチケットもあるんだぞ?これは行くしかないだろ!』「あのね……アンタわかってんの!?今日は平日よ!?学校があるから無理に決まってんでしょ!」 今でも少し動揺したりすると美琴は上条のことを『当麻』ではなく『アンタ』と言ってしまう。 美琴はわざわざ携帯のカレンダー機能を使って上条に今日の曜日を見せつけた。 だが上条はそんなことを気にも留めない。『でもこのチケット今日までなんだぜ?1日くらい休んでも大丈夫だって!それに俺は今日仕事休みだしな。』 上条はそう言って画面の向こうでぴらぴらとチケットをなびかせている。 ちなみに上条の仕事はというと高校卒業と同時にとある企業に就職、だがその企業は学園都市の裏に関わる仕事を多く行っており高校時代と同じように平和のため戦う日々が続いている。 正直なことを言うと行きたい、上条と遊園地に行きたくて仕方がない。 だがそう簡単に学校を休んでいいわけがない。 遊園地をとるか、学校をとるか、美琴は悩んだ。 そして―――――『で、どうするんだ?行くのか?行かないのか?』「…………行く…」 結局欲望に負けた美琴は2文字で返事をした。 そし朝食を早々と平らげ遊園地へ行く支度を始める。(遊園地かぁ……久しぶりだな……) 学校を休むのはいけないこととわかるが内心嬉しくて仕方がない。 美琴は鼻歌まじりで支度を進めていった。 この時はまだ、上条があんなことを言い出すなんて思ってもみなかった――――― ◇ ◇ ◇「お~!やっぱ平日は空いてるな!」 遊園地に着いた上条の第一声はそれだった。 確かに空いている。これならどんなアトラクションもほとんど待たないで楽しめそうだ。「ほんとね。……そういやさ、この遊園地で初デートしのよね。」「おお、そうだぞ!後で覚えてるか聞こうと思ってたのに速攻でわかるとは……本当に上条さんのことを愛してくれてるんですねー。」 上条はにやにやとこちらを見てきた。美琴にはそれがなんだか悔しかった。「よし!じゃあ早速何か乗ろうぜ!何か乗りたいものあるか?」「えーと……じゃあね…あれ!あのジェットコースター!!」「……い、いきなりですか…」 上条は正直ジェットコースターが苦手だ。 当然美琴はそれを知っているのだがちょっとした仕返しだ。 そして美琴は上条の手をひっぱり半ば強引にジェットコースター乗り場へと向かった。 数分後、遊園地に一際大きい絶叫が遊園地に響き渡った。 そして美琴は上条と思う存分遊園地を楽しんだ。 2人でコーヒーカップに乗ったり、いろんな絶叫マシンに乗ったり、お化け屋敷や、ゴーカートなど次々にアトラクションを回って行く 普段ならこんなにたくさんのアトラクションを楽しむことはできないだろう。 だが遊び始めてすぐに美琴はあることに気づいた。(……な~んか隠してるわね、やたらそわそわしてるし明らかにおかしいじゃないの。) おかしい、というのはもちろん体調がではなく態度だ。 明らかに何か隠し事をしているのだがもちろん美琴にはそれが何かはわからない。 そこで美琴がとった行動は「ね、次はあれ乗ろ!ほら早くっ。」「おう!」 上条の隠し事について全く気にしないということだった。 隠れて調べることもしなかったし上条に直接聞いたりもしなかった。 ではなぜそれをしなかったのか。 理由は簡単、美琴は上条を心の底から信用しているからだ。 たとえ隠し事をしていようがそれが自分を悲しませることでは絶対にない。今ではそれはわかりきったことだ。 だから上条は何か別のことで隠し事をしているのだろう、そう美琴は考えていた。 そのため美琴は上条に対し何も追求もしなかった。(それにそんなことを気にするより楽しまないとね♪) そして美琴は上条と腕を組んで別のアトラクションへと足を進めていく――――― ◇ ◇ ◇ 現在の時刻は3時ジャスト、お昼ご飯を食べてから2時間半ほどが経過したということもあり2人はおやつにソフトクリームを食べていた。 上条の怪しい振舞いは少し治まったし美琴としてももう気にならなくなっていた。「ね、ね、これ食べ終わったらここに言ってみない?」「お!いいなそれ……ん……?少し曇ってきたか?」 上条の言葉を聞き空を見上げると西のほうから雲が広がってきていた。 といってもまだまだ雨が降り出すような様子ではない。「ほんとね、帰るまで降らないといいけど……」「ああ。降るといろいろめんどうだしな。」 だが2人の思いとは裏腹に午後6時を少し回ったところで雨が降り始めた。 降り始めはたいしたこともなかったが1時間も経つと本降りの雨になってしまった。「うわっ……結構降ってきたわね……」「不幸だ……」 室内型のアトラクションの建物から出て来た2人はあまりの大雨に驚いた。 幸い折り畳み傘なら持ってきているが最低限濡れないようにしかできないだろう。「どうする?こんな雨だしもう帰る?」 美琴としては今日はもう思う存分楽しんだのでここで帰っても悔いはない。雷も鳴っているしこれ以上雨がひどくなれば傘の意味がなくなりそうだ。「いや……その、最後に観覧車……乗らない?」 なぜかわからないが上条はとぎれとぎれ尋ねてきた。 観覧車、そういえば今日はまだ乗っていない。 現在の時刻は7時半、雨は降っているがこの時間ならきれいな夜景が見れそうだ。「そうね、せっかく来たんだし乗ろっか。」「よ、よし!じゃあ行くか!」 上条は何やら落ち着かない様子で美琴の手を引っ張る。 そして観覧車の前に到着したのだが……「え、営業停止中!?」「ええすいません……先ほどの雷で機械がおかしくなってしまって……」 従業員は申し訳なさそうに謝ってきた。 どうやら中にいた人はすでに全員助けられたようだが今日はもう動かないらしい。「そうですか……残念だったわね当麻。」「あ、ああ……」 上条もとても残念そうにつぶやいた。◇ ◇ ◇ 美琴と上条は遊園地のある学区から第7学区へ戻ってきていた。遊園地のある学区とは違うがもちろんのごとくここも強い雨が降っている。 さらに不幸なことが起きた。なぜか駅から家の近くまで走るバスがこないのだ。そのため2人は歩くことになった。 行き先は美琴の寮、上条は送ってくれた後に自分のアパートに帰るらしい。(ま、これで当麻と少しでも長く一緒にいられるからいいんだけどさ、問題なのは……傘よね。) 美琴としては相合い傘がしたかったのだが折り畳み傘しかないのと雨が強過ぎるということで2人は別々に傘をさしている。 これが美琴としては残念で仕方がなかった。相合い傘でないと上条の側にいられないし結構話しづらい。現に傘をさして歩き始めてからからまだ一言も話してない。 だから美琴は少し大きめの声で隣にいる上条に向かって「最後は残念だったけどすっごく楽しかったね!」「ん?ああ……」 上条は美琴に対して微妙な反応をした。 観覧車に乗れなかったことがそれほど残念なのだろうか。(まあ観覧車っていったら恋人同士で乗る定番だけど……ここまで落ち込まなくても…) 美琴は苦笑いをした。 その後美琴の寮に着くまではたわいもない会話をしていた。最近の学校のこと、上条の仕事のこと、どれだけ話しても話題が尽きることはなかった。 そして数十分後、『あの』公園を通ることになった。「あー、この公園久しぶり、最近はここへ来ることもなくなったもんね。そういや私この公園で告白されたんだっけ?」 美琴は軽く上条をからかった。 その美琴の言葉に対して上条は笑いながら言い返してくる。 ―――――はずだった。「……なあ美琴…」「ん?」 その声は後ろから聞こえてきた。いつの間にか上条が後ろで止まっていたようだ。 そのため美琴は後ろを振り返ったのだがその瞬間不安に襲われた。上条は先ほどとは一転してなぜか真剣な表情をしている。まるで別人のように。「え……ど、どうしたの…?」「……あのさ、今から言うことは全部嘘じゃなくて本当のとこだ。だから真剣に聞いてくれ。」 美琴は空気が冷たくなったように感じた。 雨せいではない。上条がこの雰囲気を作ったためだ。「驚くかもしれないけどさ……」 そこで上条は一旦言葉を切り間を空ける。 何か仕事で悪いことが起きたのか、不安は1秒経つにつれて大きくなる。 この少しの間は美琴にとってなぜか永遠のように永く感じられた。 そして―――「今日で……俺たちの恋人関係を終わりにしないか?」「え―――――」 今上条はなんと言った? この大雨で聞き間違えたのだろうか。いや上条の声を聞き間違えるわけがない。「ア、アンタ…それ、本気で…言ってるの?」 嘘だと言ってほしい、お願いだから今のは間違いであってほしい。美琴は心の中で祈った。 だが上条はそんな美琴の祈りを打ち砕く。「ああ、本気だよ。今日で俺とお前の恋人関係は……終わりだ。」「そ、そんな……」 幸福の絶頂から奈落の底に突き落とされた。 それと同時に雨が強くなった。まるで美琴の感情を表すかのように。 美琴はパニックに陥った。冷や汗が止まらない。全身が震える。 なんで、どうして、何か自分に落ち度があったのか、疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えということが繰り返えされた。 だがパニックだからといってこのまま黙っているわけにはいかない。このままでは何もわからないまま最悪の方向に話が進んでいってしまう。「あ、アンタは……アンタは私と恋人なのが嫌……なの?私は一生恋人同士でいようと思ってたのに……アンタはそう思ったことはないの?」 パニック状態に陥りながらもなんとか口を開き美琴は震える声を絞り出すように尋ねた。 それに対し上条は冷静な声で「……今だから言えるけど俺は今までお前と一生恋人同士でいようと考えたことは1度もない。」「嘘―――――」―ズットコイビトデイヨウトオモッタコトハナイ……?「嘘じゃねぇよ。最近は特に今の関係を一刻も早く終わらせたかった。」―ソンナ……ワタシハシンジテイタノニ……「それで、だ。もう俺たちも付き合って3年経つしさ、」―ドウシテ?ドウシテアナタハワタシヲウラギッタノ?「もういい加減いいと思うんだ。」―ダメ、ソノサキヲワタシガキケバワタシハコワレテシマウ、クルッテシマウ、キエテシマウ「美琴、だから―――――」―オネガイ!オネガイダカラソノサキハイワナイデ――――― その刹那、美琴の感情に共鳴したかのように雷が少し離れたところに落ちた。それとほぼ同時に轟音が響き渡る。 当然上条が言おうとしていた言葉も聞こえない。 雷の轟音が治まると再び公園に静けさが戻った。静寂、雨音以外何も聞こえない。 美琴は今すぐこの場から逃げ出したかった。一刻も早く上条と離れたい、そう思った。 と、上条はさしていた傘を少し動かして空を見上げた。 「……やっぱり俺は不幸だな……ま、わかりきってたことだけどさ。」 静寂な世界を上条の声が切り裂く。そのとき、一瞬だが傘で隠れてしまっていた上条の顔が見え、またすぐに隠れた。 その一瞬の際に見えた上条は微笑んでいた、いつもの優しい上条の表情だったのだ。 そんな上条を見て美琴は少し落ち着いた。冷や汗は止まり、鼓動も落ち着いてきた。 すると上条は空から美琴に視線を移動し目を合わせた。また真剣な表情に戻ってしまっていた。 そして依然として真剣な表情のまま上条は「なあ美琴、美琴は俺と一緒にいて楽しいか?幸せか?」「そんなの楽しいし幸せに決まってるじゃない……」 なぜそんな当たり前のことを聞くのだろうか。一緒にいて楽しくないわけがない。幸せでないはずがない。 美琴にとって上条こそがすべてなのだから。「そうか……じゃあさ、4年前の偽デートのこと覚えてるか?ほら海原の…」 もちろん覚えている。上条との大事な思い出を忘れるわけがない。 美琴は小さくうなずいた。「美琴は知らないと思うけどそのとき俺は海原のやつと約束したんだ、御坂美琴とその周りの世界を守る、ってな。」「あ………」 本当は知っている、そう言おうかと思ったが美琴は黙って上条の話の続きを聞く。「そんで俺は美琴と付き合うことになったときこの約束を絶対守ろうと思った。命にかえても、だ。」 上条の言葉に力が入ったような気がした。表情も真剣なままだ。「でも俺はある日気づいた。美琴は俺といて幸せになれるのか、俺の不幸体質のせいで守るどころか逆に傷つけちまうんじゃないかって。そう思うようになったんだ。」「ッッ!!?」(まさか不幸体質で私が傷つくことを怖がって……別れたがってるの……?今日遊園地に行ったのは最後の思い出作りのためだったとか……?)「俺のせいで美琴が傷つくくらいなら別れたほうがいい……」 そんなことない!美琴は今すぐそう叫びたかった。 だが怯えからか言葉がでてこない。口は開けても何もしゃべれない。(お願い!少しでいいから出て!私は別れたくない!!) 必死で言葉を出そうとするがどうしても出てこない。代わりに涙がこぼれそうになる。 すると上条は何とも言えないような難しい表情で「―――――そう思った……こともあった。」 降っている雨が、少し弱まった。(え…そう思った……『こともあった』……?……じゃあ今は…?) 今の上条の言葉が気になる、それはどういう意味なのか。一刻も早く続きを聞きたい。 美琴の鼓動は加速を始める。「……でもそれじゃダメだ、もし美琴に何かあったときすぐに駆けつけてやれなくなる。」 そして上条は公園を見渡す。「俺はあの実験を止めることができて本当に良かった、だって美琴を守ることができたんだから。守ることができたから今大好きな美琴とこうして一緒にいられるんだからな。」「大好きな……」 もう美琴には上条が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。 上条は別れたがっているのかこれからも付き合っていたいのか、付き合っていたいのなら先ほどの『恋人関係の終わり』という言葉はおかしい。 だが別れたがっているならなぜ今『大好きな』などと言ったのか。 考えがまとまらず混乱している美琴を前に上条は話を続ける。「美琴、俺は不幸体質だ。だからいつどんな危険にさらされるかわからない。その危険に美琴を巻き込んじまうこともあるかもしれない。でも……それでも俺は美琴と一緒にいたい。今よりもっと美琴を愛したいんだ。」「え……それって………?」 まさか、と美琴は思った。今の言葉から1つ、上条が言いたいことが連想できた。今自分が連想したことをありえないとも思った。 だがもし美琴が連想したことを本当に上条が言おうとしているのならば――――― 美琴の鼓動はさらに加速する。ドクン、ドクン、と命の音がはっきりと聞こえる。「美琴……いや、御坂美琴さん。俺、上条当麻は生涯あなたの側で、何が起ころうと必ずあなたとあなたの周りの世界を守り続けます。だから―――――」 上条は美琴に優しく微笑んだ。その笑顔がすべての不安を吹き飛ばす。 美琴の鼓動の速度は限界に達し、胸が熱くなる。まさか、本当に……? そして―――――――――「―――――俺と結婚して、上条美琴になってくれませんか?」 雨が、止んだ。 止みそうになかった、土砂降りの雨が。「……あ……あぁ……と、ま…」 言葉にならない。呂律がまわらない。思考が追いつかない。 そんな中ただ1つ、膨大な感情がわき上がってくる。嬉しい―――今まで生きてきてこんなに嬉しいことはない―――なのに―――どうして―――こんなにも―――「み、美琴……?泣いてる…のか…?」涙が止まらないのだろう――― 上条が尋ねた通り美琴の頬を大粒の涙が伝う。その涙は雨と入り交じり地面に落ち、どこかへ流れていった。 もう我慢できない、この感情を抑えきれない、抑えたくない。「美琴!?」 美琴は傘を放り投げ勢いよく上条に抱きつき大声で泣いた。止んだ雨が美琴から代わりに出てくるというほど泣いた。 嬉しいとこんなにも泣けるものだとは知らなかった。 美琴の美しい鳴き声は静かな公園内に響き渡る。「う、うぁ、あ、んた!まぎっ、らわし、いの、よ、恋人関、係の終わっ、り、とか、今のっ、関け、いを、終わらっ、せた、い、とか……別れ、話かとっ、思っ、たじゃ、ないの!!!」「ご、ごめん……俺も、その、かなり緊張してたからところどころ考えてた言葉がとんじゃって……」 美琴は上条の胸の中で泣きながら叫んだ、あれだけ不安にされたのだから無理はない。 嬉しさと別れ話でないことに安心したことで溜まっていたものが全て溢れ出しているのだ。 そんな美琴を上条は優しく抱きしめていた。 それから数分後、美琴は上条から離れた。上条の服は雨と美琴の涙でびしょびしょになっている。「ごめん、その……つい…」 服を濡らしてしまったことと少し強い口調だったことに対して上条に謝った。「いや、俺も悪かったよ……『恋人関係の終わり』ってのは『夫婦の関係になろう』ってことだったんだけど……ごめん、さっきも言ったけど緊張のあまり言葉がとんでた…」 上条は申し訳なさそうに誤ってきた。 だが美琴は自分に対して腹立たしかった。 上条は裏切るはずがない、そう上条を絶対的に信用していたはずなのに別れ話だと思ってしまったからだ。 当然美琴に非はない、どちらかといえばあれは言葉をすっとばした上条に非がある。だがそれでも上条を疑った自分が嫌だった。 そして上条は不安そうな表情で「あの、美琴……それで…返事は……?」 上条の問いかけに美琴は我に返った。上条が待っている、早く返事をしなければ。 もう返事は決まっているのだから―――「……ねぇ当麻、当麻は覚えてるんだよね?4年前の夏、あの悪夢のような実験から私を救ってくれたことを。」「そりゃ……まあな…」「あの日、私は当麻に助けてもらえなかったら今この世にはいなかった。『妹達』を守るために死んでいた。でもそんな私を命がけで助けてくれた……この……右手で……」 美琴は上条の右手を両手で優しく包み込む。数々の事件を解決し自分を守ってくれた右手は、大きく、暖かかった。「私はあの夏を境に私の頭の中は当麻でいっぱいになった。だから偽デートできた時は嬉しかったし、大覇星祭の罰ゲームで途中で終わっちゃったのは悲しかった。そして私は当麻をどんどん好きに、大好きになった。今では私の心はすっかりあなたのもの……私はもう当麻なしじゃ生きていけない。当麻が私の側からいなくなったら私は死んでしまう…だから……」 美琴はもう1度深呼吸をしてから右手を握る力を強め、視線を上条の顔に戻す。 そして―――――「だから、私からもお願いします、私を上条美琴にしてください。そして、生涯あなたの側にいさせてください―――――」 同時に視界が歪んでいく。 しかしこれ以上泣いている姿を見せたくないので必死に我慢するが今にも涙はこぼれそうだ。 と、その歪む視界の中で美琴は上条がこちらを見ながらも空いている左手でポケットをゴソゴソと探り1つの小さな箱を取り出しそうとしているのがわかった。(え……まさかあれは……)「美琴、順番が少しおかしいかもしれないけど……受け取ってくれ。」 そう言って上条から差し出されたのは小さな箱、美琴は上条の右手を手放し両手でその箱を受け取る。 だいたいの察しはついている。この状況で彼氏から渡される物といったら1つ。 美琴がゆっくりとその箱を開けるとそこには―――――「わぁ………すっごくキレイな指輪……」 光り輝く1つの指輪、そう結婚指輪だ。「ほんとはプロポーズした直後に渡そうと思ったんだけどいいタイミングがなかったからな。俺はまだ安月給だから大した指輪じゃないけど……受け取ってくれるんだよな?」「そんなの当たり前じゃない……ありがとう当麻……」「じゃあ……」 すると上条は右手で指輪を手に取ったかと思うと左手で美琴の手をとり、指輪をはめた。「あ……」「これで……本当に上条美琴だな。」 上条は笑顔で微笑みかけてきた。 また涙がこぼれる、さっきから我慢していたがもう無理だった。真珠のように光る涙は再び美琴の頬を伝う。「美琴、今日はよく泣くな。」「だ、だって嬉しすぎるんだもん!これだけ嬉しいのに泣かないほうがおかしいわよ。」「そんなに俺と結婚できることが嬉しいのか?可愛いなー美琴。」「ッ!?………う、嬉しいわよ!!ダメなの嬉しかったら!?それともアンタは嬉しくないわけ!?」「うおっ!恥ずかしいからって電気出すな!俺も嬉しいに決まってんだろ?この時をどれだけ待ったと思ってんだよ。」 上条は電撃を右手で打ち消すとそのまま美琴を抱き寄せた。「わっ、ちょっと急に……」 大好きな彼からの抱擁、美琴は今まで何度も抱きしめてもらっていたが今が一番心地よく感じた。 この心地よさは上条といる時にしか絶対味わえない。(今度こそ……もう二度と疑ったりしないんだから……) 美琴は心の中で密かに誓い、上条の背に腕を回し抱きつく力を強めた。 すると上条も美琴を抱きしめる力を強め、「美琴、プロポーズを受けてくれてありがとう。俺は……この世で1番の幸せ者だ。俺が美琴を絶対に幸せにしてやる。だからずっと俺の側にいてくれ。」「……うん…私は当麻に一生ついていく、何があっても、絶対に。それに当麻に幸せにしてもらうだけじゃなくて私も当麻を幸せにしてやるんだから。」「ははっ。美琴らしい答えだな。………本当にありがとう美琴…愛してる。これからも一生な。」「私もよ、当麻……大好き……」 そして2人は顔をゆっくりと近づけ、満天の星空の元、誓いのキスを交わした。 この日いつもと同じ1日を送るはずだった1人の少女は、大好きな彼によって世界で1番の幸せを手に入れることができた。 御坂美琴は、いや、上条美琴はこの日を一生忘れない。未来永劫この日の出来事を胸に刻んで生きていく――――― ◇ ◇ ◇「もしもし?上やんか?」『お、ようやくでたか、さっきはありがとな土御門。助かったよ。』「あれくらいどうってことないぜよ。急にメールで『バスを止めてあの公園を閉鎖してくれ』って言ってきたのはびっくりしたけどな。それで……うまくいったのか?」『おう!もちろんさ!美琴のやつすっげー喜んでくれたよ。ほんとは観覧車でプロポーズしたかったんだけど、まあ成功したんだし文句は言えねーな。』「そりゃよかったにゃー……にしてもよく公園でプロポーズしようなんてとっさに思いついたな。」『俺をなめんなよ?不幸だってことは自覚してんだから10通りのプロポーズ場所と10通りのプロポーズの言葉は考えてあったんだよ。正直雨の中美琴を歩かせたくなかったけど絶対に今日プロポーズしたかったしな。』「……さすがだ上やん、でもなんで今日プロポーズしたんだ?今も“今日絶対プロポーズしたかった”って言ったし。わざわざ超電磁砲を学校休ませてまで……何か意味はあったのかにゃー?」『そりゃあるに決まってんだろ?なんたって今日は……』「今日は?」『3年前に俺が美琴と最初にデートした日なんだ!だから同じ日に同じ場所でプロポーズしようと思ったんだよ。お、もう美琴が来るみたいだからまた明日な、それじゃ。』「切れた……よく3年も前のこと覚えてるにゃー。まあそれだけ超電磁砲のこと好きなんだろうけどさ……さて、今日のこともあるし明日は上やんにめんどくさい仕事でもしてもらうぜよ。」 ―THE END―
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いちゃいちゃの究極っつとABCとかになるんかね? 上条「何か日が当たるようなったなここ?」美琴「え? ええ、そ、そうね、来た時より明るくなったわね」上条「んー。つう事はあれか? 何か期待されてるって事なのか? 俺たち」美琴「え? さ、さあどうかしらね」美琴(期待って……。一体何期待されてるっての!? 大体、いちゃいちゃって、やっぱ手ぇ繋いで公園歩いちゃったとかそー言う事なのかしら……)『ジ……(上条の右手をガン見)』上条「何見てんだ御坂?」美琴「は……? え、えええ、えーと……。あは、あははははは……、取り合えず、えいっ!」『バチッ』上条「うおっ!? 危ねぇ! 何しやがんだ急に、このビリビリ娘はっ!」美琴「ビリビリって言うなってんでしょうが、このバカァァァアアア!!」上条「おまっ! 電撃飛ばしといて今度は逆ギレですか!?」美琴「何よ、ちょっと電撃飛ばしたくらいで一々ギャーギャー騒ぐんじゃないわよ、小さい男ね! どぉーせその右手のおかげで効きゃしないんだからどぉでもいいでしょうが!!」『ダンダンッ!(足踏み)』上条「被害を受けた上に非難まで受けるとは……。ふ、不幸だぁ……」『ガク……』美琴「フンッ。(ど、どうやら誤魔化せたみたいね……)」上条「あー……、カミジョーさんは今ので非常にショックを受けました。ですので、今日はこのまま帰ってよろしいでしょうか? ええ、いいですよ。はいそうですか、では皆さんさやうなら……」美琴「コラコラ。アンタは何勝手に締めくくって帰ろうとしてんのよ? 私はどーすんのよ? わ、た、し、は」上条「お前も帰ればぁ? ハァ……」美琴「あ、ちょ、もうっ! ちょ……とぉ、ま、ち、な、さ、い、よぉ……」『ぐぐぐ……(上条の腕を掴んで踏ん張る)』上条「何だよ御坂……。今日のカミジョーさんは傷心旅行に出たいくらいブルーなんですのよ? ただ傷心旅行に行く金なんかこれっぽっちも無いから、取り合えずスーパーの特売にでも行ってこようと思ってるんですがね?」美琴「そ、それって私より大事なの!? (い、言っちゃった!?)」『カァ……ッ』上条「はあ? あの……、仰っている意味が良く判り兼ねるのですが?」美琴「…………」上条「あの……、御坂?」美琴(これ以上言っちゃダメ! 私が期待しちゃう! 私がコイツに期待しちゃうからっ!! と、とにかく、とにかく何か言わないと……)上条「もしもーし」美琴「え、あ、え、えーと……ね。その、あの、何て言うか……」『モジモジ……』上条「ああーっ!!」美琴「ふえっ?」『ビクッ』上条「御坂!!」『ガシィィッ!!(美琴の両肩をホールド)』美琴「ハイッ!!」『ビクッ』上条「また『ゲコ太』か? そうなのか? そうなんだな?」美琴「え! えぇ!?」上条「やっぱりそーなんだなー。おかしいと思ったんだ。お前がこんな変な企画にホイホイ乗ってくるなんて。考えてみたら前回の罰ゲームん時もそうだった。その前は、海ば……ま、あれはいいな。あれはノーカンだな。ノーカンノーカン」美琴「あ、あの…」上条「お前ホントゲコ太好きなんだなー。よし判った! 他ならぬ御坂の頼みなら聞いてやらない事も無い事も無いの反対だからアリだ!!」美琴「え……、ちょ、ちょっと……」上条「インデックスの事では、随分と借りがあるからな。あん時は罰ゲームやら、その後のごたごたやらですっかりうやむやになっちまったけど、俺は忘れてたわけじゃ無いんですよ?」美琴「そ、そんな……私は別に貸したなんて……」上条「じゃ、要らないとか? 流石見た目通り太っぱ――」美琴「それ以上言ったら許さないわよ」『ゴゴゴゴ……』上条「ひゃい!?」美琴「フン」上条「ハァ……、で、どうすっかねこれから」美琴「え?」上条「やっぱあれかね? いちゃいちゃの究極っつとABCとかになるんかね?」美琴「ハイ! 先生!」『ビッ』上条「はい、御坂君」美琴「AとかBとかCって、何?」上条「あ、あ……」美琴「何でそこで遠い目すんのよアンタは?」上条「ぅぅぅ……。ごめん、別の事考えっから許してくれ!」美琴「ほほ……う……」上条「な、何っ?」『ビクッ』美琴「私に言えない事、な訳ね?」上条「あ、あ……、え、え……」『タラ……(冷や汗)』美琴「ゆったんさい。先生怒らないから」上条「とか言って怒るじゃん。俺の経験則から言って、それ言って怒らなかった人皆無――」美琴「じゃ、判るわよねぇ? 言わなくても怒るって……」『ギロッ』上条「ひっ!? ふ、ふこ、不幸だッ」美琴「男なら覚悟を決める。ほら、さっさと全部吐いて楽になったらどうだ?」上条「何? その電気スタンド俺に向ける様なポーズ? べ、弁護士呼んでくれよ刑事サン!? こ、この人暴力振るう気だよ! 自白強要だよ!!」美琴「は、や、く、い、えっ、て、の!」上条「痛ッ!? 痛い痛い!! 暴力反対!! つねるの禁止!! 人類みな兄弟ッ!! 痛ッ!! 喋る、喋るからつねるの止めて!!」美琴「最初っから素直にしてりゃ痛い目見ないで済んだものを……」上条「(こえーよ御坂、きっとコイツの前世ってナチスのSSか何かだよ……)」美琴「誰が第三帝国の手先ですって? 馬鹿言ってないでさっさと白状する」上条「ぅ。じゃ、怒ったり驚いたりすんなよ。暴力も禁止だからな!」美琴「アンタに隠し子がいるって聞いても取りみだしません」上条「いや、それは驚こうぜ――じゃ、話すけど、ABCってのは恋愛の順序を顕わしたものなんだけど……」美琴「うんうん」上条「ABCは3段階の順序を表してるんだ」美琴「それでそれで」上条「え……。まず、A。これがキス」美琴「うん。Aがキス。……、…………」『ボンッ』上条「ほらぁ。またふにゃぁか? いいぞ、大丈夫だ、問題無い。(その方が俺も助かる)」美琴「たひっ、たひじょぶだから、つづけへ」上条「うっ。じゃ、気をしっかり持てよ」美琴「ふ、ふひゅん」上条「(大丈夫かコイツ)じゃ、Bな。ペッティング。Hの前戯とか――」美琴「あう゛」『ブシュー』上条「み、御坂っ!!」美琴「らいじょーぶ、らいじょーぶよー」上条「はぁ、これじゃ何時ゲコ太ゲット(いちゃいちゃ)出来るか判んねーなー。ってか出来るのか?」結局Bまで聞いた所でダウンした美琴は、上条さんの膝枕で、上条の上着を掛け布団代わりにお休み中。一方、上条は、そんな美琴の寝顔を時折覗き込みながら、色々と思案中です。上条(何か妙に熱い視線を感じるなー。つーか、いい加減起きねーかな御坂? こんなトコでいつまでも寝てっと背中イテーだろうし……)上条「おーい、御坂? もしもーし。早く起きねーと、風邪引きますよー」『チョイチョイ(頬をつつく)』美琴「うーん……。むにゃむにゃ」上条「なんつー幸せそうな寝顔です事……」上条(んー、起きねえなー、やっぱり。どーすっかなーこれ?)上条「いっそ抱き抱えてコイツの寮まで……。いやいや待てよ?」上条(そんな姿を土御門やら青髪やらに見つかったら? いや、ぜってー見つかるに決まってる。んでアイツら俺の事目ぇ血走らせて追いかけ回すに決まってんだ。それで逃げ切ったとしても、後である事無い事言いふらさまくってみろ……!?)上条「カミジョーさんのバラ色――予定――の恋愛模様が!? 神聖な花園が土足で踏みにじられてっ!! うっがー! 不幸だぁ――――――――――!!」上条『ゼエ、ゼエ』「こ、こうなったらヤルしかねえ。鬼になれ――。血に飢えた獣になれ、上条当麻ッ!! そして奴らの喉笛をガブーッと……」美琴「…………」上条(あれ? いつの間に目を覚ましたんだコイツ?)上条「みさ――」美琴「イヤッ!!」『ゴンッ!(垂直アッパー)』上条「はぐっ!?」美琴「ぁ……」上条「な、ないひゅあぱぁ……、ふこ……」『ドサッ(親指を立てながらゆっくりと崩れ落ちる)』美琴「あれ? あ、あれぇ?」美琴(私一体どうしたんだっけ? 落ち着いて思い出せー……。確か、コイツがAとかBとかおかしな事言いだしたんだったわ。それで……)『もそもそ』美琴「これ……。ぇ?」美琴(学、ラン……?)『ギュ―――――ッ(思わず学ランを引き寄せて丸まる美琴)』美琴(はぁ、こんなモノからもでもアイツの無駄な包容力を感じるのねぇー……)美琴「って!? な、何考えてんの私!? ち、違うのっ!! こ、これは寒いから!! そう!! 寒いから思わずあったかいなぁー、なんてっ!! はは、あはは、あはははは……、はは、は、は……」『スリスリ(空笑いしながら上条の膝をなでる)』美琴「!!!」『ガバッ!! ズサササササササッ!!』美琴(な、何でわ、わた、わた、わた……)美琴「ふにゃあ」『ゴンッ!』美琴「あだっ!? ぅ……、頭が割れる……。不幸だわこれ……」『すりすり(自分の頭をなでる)』美琴「!!」『ババッ! バババッ!!(高速で自身の身だしなみチェック)』美琴「ふー……、おかしな所は無いみたいね……」『ガックリ』上条「う、う……」美琴「あはははは。ま、まあ、アレね。は、初めてが気付かないうちに終わっちゃいましたじゃ、ああ、あんまりにも情けないもん……ブッ!?」『カァァァァァァアアアアア……(ゆでダコの様に真っ赤)』上条「不幸だ……。まだ顎がガクガクする」『コキコキ』美琴「ふぁ、ふぁたひは何期待してんのひょ? あ、あんにゃヤツ……、あんにゃヤツゥにはひ……」上条「あの右は絶対世界に通用するよ。日本初のヘヴィ級王者誕生ってか?」美琴「誰がヘヴィ級じゃゴラァ――――――――――ッ!!」『ガシッ!!(タックル&馬乗り)』上条「うわっ!? み、御坂!!」美琴「アンタはこんな時まで私の事スルーなんかっ!! ス、ル、ウ、な、ん、かァァァァァァアアアアアア!!」『ガクガク(マウントから胸倉を掴んでゆする)』上条「な、ん、の、は、な、し、だ、や、め、ろ、お、お、お、お……」美琴「ざけんじゃないわよこのっ!! パンチは褒めて、体は放置ですって!? こんな目の前に美味しいそうな女の子が転がってたら、唇の一つや二つや三つ奪うのが漢(おとこ)の筋ってもんでしょうが!!」上条「ま、待て御坂、お、お前言ってる事がおかしいって」美琴「何がよっ!? AとかBとかCとか!! とにかくアンタが先に言いだしたんだから、さっさと責任とって私に実践してみろってのよ!! この据え膳食わずの甲斐性な――」上条「落ち着け美琴ッ!!」『ギュ(持ちつかせようと抱きしめる)』美琴「ッ!?」『ビクッ』上条「美琴、ちょっと落ち着こうな。ほら、女の子のマウントポジションはカミジョーさん的には嬉し恥ずかしシチュエーションながら、取り合えず上から降りて」美琴「う、うん……」『ボボボボボ……』上条「よし美琴。で、何だって? 俺と、その、AとかBとかどうしたって?」美琴「え? そ、それは、えーとぉ……」『ザァ―――――(一気に血の気が引く)』上条「はぁ……、いいよ。言わなくて」美琴「へ?」上条「あのさー。お前、もう少し自分を大事にしろよな。ゲコ太ゲコ太ってそんなにお前にとって大事なのか?」美琴「え? え?」上条「まー、ふった俺が悪いんだけどさ。よく無いだろ? そう言う事は、好き同士がしなくちゃな」美琴「ちょ、ちょっと待って! 何か話がおかしな方向に行って――」上条「とにかく今回の目標は何だ! ヨシ! 美琴クン言ってみたまえ!」美琴「へ? あ? い、いま、美琴って呼ん――」上条「それはいいから答えたまえ!」美琴「あ、はい……。い、いちゃいちゃ……、する?」上条「そう! 正解ッ!」『ビシッ』美琴「ふえ?」上条「では第二問! 我々がいちゃいちゃするための障害を述べよ!」美琴「え……、ア、アンタの女性遍歴?」上条「ぐはっ!? そ、それは誤解が六回ですのよ御坂さん。ぼ、僕は決して優柔不断なハーレムキャラではございませんし、そもフラグ男などと良く言われますが、けっしてそれが良いのかと言えば、たまに発生する桃色イベントぐらいで、その後は、もう、もう……。あ、心の汗……」美琴「(ウ、ウザい)」上条「ぐぞ……。俺だってなぁ。俺だって、ホントは恋愛したいんだぜ。誰はばかる事無くキャッキャウフフしてえんでございますよ!!」美琴「え!? そ、それならわたし――」☆「それには及ばん」『グゴゴゴゴゴゴ……(床からせり上がる水槽。そこには逆さに浮かんだ、男にも女にも以下省略)』上条&美琴『ビクッ』「「ア、アンタだれ?」」☆「気にする事は無い。そうだな。上条当麻君。君の先輩、とだけ言っておこう」上条(先輩……? 学校にいたかこんな変な奴……?)☆「特に意味は無い。一つ付け加えるなら、学校ばかりとは限らん、と言う事だ」上条「は、はあ……」美琴「あの……」☆「何かね?」美琴「さっきの言葉の意味って?」☆「言葉どおりだ。君たちは君たちの思うままに青春を謳歌したまえ、と言う事だ」美琴「え、それってどう言う意味……?」☆「学園都市第3位の割には飲みこみが悪いな。それとも聞き返す事に何か意味があると取るべきかな?」『ニヤリ』美琴「んなっ!? ちょ、ちょっと、今の言葉取り消しなさふががっ!?」上条「わ、判りましたっ! 自由にしていいって事ですよね!」美琴「むがあ―――――!!」☆「君は物わかりがいいな」上条「ハハハハ。よ、良く言われますぅ」☆「(これで、後回しに考えていたプランが大幅に短縮される)」上条「え?」☆「若者が細かい事を気にするな。では、存分に励みたまえ。成功を期待している」『グゴゴゴゴゴゴ……(水槽が床に沈んで行く)』上条「はぁ……、何だったんだ一た痛ッ!!」美琴「ぷぇ。口離せこの馬鹿ぁ!!」上条「だからって噛む事ねえだろ?」美琴「ざけんじゃないわよ!! アノ金魚ヤロー、私の事見て笑ったのよ!? タダじゃおかない!! 今すぐ床ぶち抜いてあのクソ水槽から引きずり出して3枚にオロシテやるんだからっ!!」上条「物騒な事言ってないで外行くぞ、外」美琴「は、な、せっ、て、の、が、わ、か、ん、ねーのか、アン、きゃ!?」『ガバッ(上条にお姫様だっこされる)』上条「ああ、判りませんねー。猛獣ビリビリ中学生のたわ言など」美琴「ま、またビリビリって!? アンタまで私の事馬鹿に、きゃああ――――!?」『グワッ(上条がぐるぐる回りだしたので思わず首にしがみつく)』上条「大人しくしないと、ぐったりするまでメリーゴーランドの刑にしますよぉ――――?」美琴「わ、判った、判ったから、回るの、きゃああああ!?」『グルン(今度は逆回転)』上条「判ってくれた?」美琴「判ったって言ったでしょぉぉおぉおおお!? だ、だから、だから早く止め、きゃああああああああああああ!!」美琴(ふふ。ホントは全然平気なんだけど、面白いからもう少しこのまま)『ギュ』美琴「(べ、別に気分転換に抱きついてる訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!)」『ギュ――――ッ』上条「どうだ御坂ぁ!! こ、これが上条ハリケーンだぁ―――――――――――――!!」美琴「やめてとめて、きゃああああああああああああ―――――!!」『ギュギュッ』謎の部屋を抜け出した2人は、☆の言った通り好き勝手する事にしたのだが。美琴「どこ向かってんのよ?」上条「取り合えずスーパー」美琴「スーパー?」上条「そう、スーパー」美琴「先生質もーん!」『バッ』上条「はい、美琴君!」美琴「美こっ!? み、みみ、美ここ……」上条「巫女? 姫神の事か?」美琴「違ッ!? って姫神って誰?」上条「うちのクラスメイトの巫女さん。これがまた格好とは正反対の何と言うか何と言うか、色々残念な感じなんだよ」美琴「いつの女?」上条「は?」美琴「いつ助けた女なの?」『パリパリ……』上条「ぇ……」(何怒ってんだコイツ?)『ジリジリ……』美琴「私より先? 後?」『ギロッ』上条『ゴクッ』「さ、先」美琴「どっちのが大変だった?」上条「へ?」美琴「どっちのが手間かかる女だったのか聞いてるのよ?」『ピシッ』上条「ひぇええ!? ひ、姫神っかな? そん時俺、右腕もげて死にかけたし。あ、でも、お前ん時も、全身打撲で毛細血管バンバン弾けてやっぱ死にかけだったしな」美琴「…………」上条「え? 何? 良く聞こえな――」美琴「馬鹿っつたのよ、このトウヘンボクッ!!」『バリバリバリッ』上条「ぬおぅわっ!! 御坂お前、急な電撃は止めろって――」美琴「死ぬわよ」上条「は?」美琴「アンタなんかホントはぜんっぜん弱いんだから、いつか死んじゃうわよ!!」上条「あの……、急にシリアス?」美琴「茶化すんじゃないわよこの馬鹿ぁ――――――――――!!」『ドスッ(頭から鳩尾に体当たり)』上条「おふっ!!」美琴「勝ち逃げなんかしたら許さないんだから、ぐすっ、ぐすっ」上条「不幸だぁ……。って、あれ?」美琴「ぐすっ、ぐすっ……」上条「あの……」美琴『キッ』「ぐすっ、ぐすっ……。何よぉ、すんっ、ぐすっ」上条(何ですかこの修羅場……?)『ポリポリ(上条困った顔で頬をかく)』「ふぅ。あのな、美琴」『パシッ(美琴のの頬を両手で挟んで)』美琴「ふきゅい!?」上条「俺を勝手に殺すな」美琴『コクコクコク……(目だけでうなずく)』上条「まあ確かにお前が言う通り、俺も毎回生き残る度に、は、まぁ本当によくもって思うのは確かだよ。だけどな、『死ぬ気で頑張る』とか、『死んでも頑張る』とか、そー言う言葉は、俺の辞書にはねーんだわ」美琴「…………」上条「それでもお前が不安に思うなら約束してやる。勝ち逃げはしない」美琴「で、出来ると、思ってんの?」上条「ああ出来る。信じてるからな――仲間を」美琴「ッ!? そこ……ぁ……」(聞けないっ! 仲間(そこ)に私はいるのかなんて……)上条「頼むぜ美琴」美琴『ぽわぁぁぁぁぁ……(星と花を散らせた蕩ける様な満面の笑み)』上条「それにはまず泣き虫治してくれよな」美琴「ハッ!? うっさいうっさいうっさーい!! も、当麻のくせに生意気なのよっ!!」上条「ハハッ、その調子で頼むぜ御坂。天下の学園第3位様には、涙より元気いっぱいのが似合ってるぜ!!」(あれ? 今名前で呼ばれた様な気がすっけど……)取り合えず仲直り(?)した2人は、当座の目的地、『スーパー』に向かっていたのだが……。美琴「ねえ」上条「…………」美琴「ねえっ!」上条「…………」美琴「この状況ですら無視すんのかコラァ!!」『バシバシ』上条「って!? 何なんですかお前は? 反抗期ですか?」美琴「呼んでんだから返事くらいしろっ!!」上条「ああ……、わりぃわりぃ。で、何んだ?」美琴「えっ、あ、あのぅ……」『モジモジ』上条「どうした御坂? 顔なんか真っ赤にして」美琴「え……あ、えっ、あぁ……」(「何で私の手を握って歩くの?」って聞きたいのに言葉が出ないっ!?)『チラ、チラ(目線が手と、顔と、何も無い空間を順番に追う)』上条「ああっ!!」美琴「!!」『ビクゥ』上条(トイレ、だろ? この様子、きっとそうだ。そうに違いありませんぜ、とカミジョーさんの中の紳士な部分が申しております)上条「わりぃわりぃ。え、えーとー」『キョロキョロ』(ここは自然に俺がトイレに行くふりをして……。お! おあつらえ向きの店があるじゃんよ)「美琴わりぃ。ちょっと寄り道いいか?」美琴「え? あ、ちょ、ちょっとぉ」『タタッ、トタタ、トタッ……(上条に手を引かれてよろける様に後について行く)』 そうして2人が入ったのは、とある大型ショッピングセンターの1階。しかも入った場所が悪かったのか、上条の運(ふこう)のなせる技か、この日の1階はフロア全てで女性用インナーを扱っていたのだ!!上条(うわっ!? 何でこんなッ!! ク、クソッ、き、気にするんじゃ無い上条当麻。無心!! 無心になるんだ)『スタスタスタ……(斜め下を向いて視野を極力狭くして足早に歩く)』美琴(やっ、ちょっ、あのニーハイかわいい……。このショーツのひらひらもステキね……。でもどうしてこんな所……? ハッ!? も、もしや……)『カァァァアアアアア……』美琴「ねぇ……」『モジモジッ』上条(見るな感じるな考えるな。アレには中身は入って無い。ただの布切れ、ただの布切れなんだ!)『スタスタスタ』美琴「あの、さ……。私も最近黒子の奴に毒されて来たのかな? その……、たまには大人の下着なんてもの、その、いいかなあ、なんて……」『モジモジッ』上条(あの黒いガーターベルトも、スケスケのキャミソールも俺には見えない! 見えないんだぁぁぁああああああああああ!!)『スタスタスタ』美琴「それでね、もし、やっぱさ、そう言うの買うならさ、い、異性って言うの? ほら、黒子とかじゃ色々と危険だし? と、年、う、上の意見なんかも参考にし、しし、したいし?」『モジモジッ』上条『ビクッ』(くあっ!! ば、馬鹿なっ!? 何ですか? 何で下着姿のオネーサンが頬笑みながら目の前を横切るんでせうか!? ここは桃源郷? いや馬鹿止めろ俺の心!? 無心だと言うのが判らんのかっ!!)『タタタタタ(上条、小走りになる)』美琴「でさ、か、かかか、勘違い、し、しな、しな、しないで聞いて欲しいんだけど。さ、参考に、ア、アアア、アンタの意見聞かせ……て……ほしい、かな? なんて……」『モジモジッ』上条(ヒッ!!)『ビクッ』「ノーパン……」美琴「ノ、ノーパンッ!?」『ビクッ』上条『ガクガク(目の前を通った超シースルーショーツ『羽衣』を着た女性を指さして震える)』美琴(そ、そんな高いハードル、き、急に飛び越えろって言われ……ハッ!? これは試練? 私は今パートナーとして試されてるの……?)上条『ギギギギ……(上条の首がぎこちなく回る)』「みさか……(棒読み)」美琴『ビクッ』「え! あ!? あの、わ、私頑張るからっ!!」『グッ(拳を握る)』上条「むりはするな。せかいがちがうんだ。わすれろ。おれもわすれるから(棒読み)」美琴「だ、な、何言ってんのよ? だ、大丈夫だから。ほら、今証明して見せるからっ!」『パッ(上条の手を解く)』上条「?」美琴「み、見ないでよねこっち……っと、よっ、と……」『モソモソ、ゴソゴソ(上条から見えない角度で、何やらスカートに手を突っ込んでくねくねしている)』上条「お、おい?」美琴「お手」上条「お手」美琴「はい」『パサ』上条「何これ?」美琴「証明」上条「何だよ証め……(手にしたものを広げると、見た事のある短パン)ぶっ!? こ、こりゅえ!!」『ボフン(真っ赤)』美琴「今はこれが精一杯――無くさないでよね。い、ち、お、う、返してもらう予定だから」『カァ――――ッ(上条以上に真っ赤)』上条『コクコク(短パンを握りしめてうなずく)』美琴「オッケ。じゃ、そ、その、恥ずかしいから、もうしまってくれる?」『モジッ』上条「お、おう、わりぃ……」『ゴソゴソ』美琴(ポケットに仕舞った……)『ボフッ』上条(何やってんだ俺? 御坂の短パン、ポケットにねじ込んで……。しかも、この状況になんかドキドキしてないかぁぁぁあああああああ?)美琴「ねえ」上条「ひゃい!?」『ビクッ(右腕に美琴がしなだれかかって来たので)』美琴「折角だから、ここ、回ってもいい?」『ギュ』上条「お、おう」(む、胸ッ!? 胸ェッ!?)美琴(おかしいわね? こう言う時は必ず邪魔が入るモンなんだけど? ま、いいわ。今はこの時間を楽しみましょ)白井「今日は一体全体何なんですの!? つまんない事件ばっかりあちこちあちこちあちこちと――」初春『白井さん、そんな事言ってないでさっさとお財布探して下さい! 中に入ってる映画チケットで入館出来る時間は、あと30分切ってきゃ!?』白井「初春?」××『その映画は超レアなんです。これを逃すと次はいつか分からないんですよ! 本当に超よろしくお願いします!!』初春『だ、か、勝手に通信しないで下さい! 白井さん、そう言う事らしいんでよろしくお願いしますね!』『ブツッ』白井「ホント何なんですのよ今日は?」
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タイトルなんか自分でかんがえなさい! 最近、巷ではtwitterが流行っているそうだ。その波は学生がほとんどを占めるこの学園都市にも押し寄せてきた。授業中にも携帯電話を開いて何かを見ている生徒が多くなっていることに教師は危険を感じている。そのため、twitter自体を校内ですることを禁止した学校も多々ある。その流れなのか、twitter以外のものを探している学生が多い。能力開発の傍ら日常を語る。それが、彼らのライフスタイルである。「黒子ぉー。ちょっとパソコン借りてもいい?」「いいですわよ。お姉さまのためなら、私はこの身体m・・・」「このド変態がぁ!・・・ったく。いつになったらこの変態っぷりが収まるんだか」「悪いわね。黒子。ちょっくら使わせてもらうわ」 常盤台中学校の学生寮の一角ではいつも賑やかな声がする。いつもの事だと周りは自分の事をこなしている。このお嬢様学校は校則がとても厳しく、巷で話題のものにはあまり触れさせないことが多かった。美琴は白井のPCの電源をつけた。そして、ウェブブラウザを開いてとあるサイトを見る。慣れた手つきでIDとパスワードを入力していく。すると、そこは大手ウェブサーバーのブログサイトが出てくる。ここは携帯電話でも見ることができるのだが、PC用の様子を見たくなったのだ。「御坂美琴」という名前はばれないようにしている。ただ、デザインでわかる人はわかってしまうくらいである。「ゲコ太」がたくさんついているから。「んー。最近なんだかネタがないわね…あ!あいつの不幸ネタを使えば…でも、どうしよう。電話かけらんないよぉ」「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーどうしようーーーーーーーーーいざとなったらかけられないとかなんなのよー!」「あーーーーーーーー!えいっ!」プルルルルルルルルルッ!プルルルルルルルルルルッ!「あー、現在この番号はつかわれておr」「無視すんなやゴルァ!」「あ!てめっ!耳元でそんな大声出すんじゃねーよ。ったく。なんなんだよ。」「あ・・・あのね。・・・公園で待ってるから。来て?」「ん?わかった。今日は補講もなにもありませんし。」「やったぁ☆ありがとう!それじゃ、遅れたら罰ゲームだからね!」「罰もなにもないだろうがよ!」 ・・・勝手に切りやがった。と、上条はあきれ顔で言う。居候のシスターに食料を与えなければ死が訪れるため、急いでご飯支度をする。冷蔵庫の中には賞味期限ぎりぎりの卵と、野菜が入っている。それで、適当に貧乏な学生でも作れば豪華になってしまう料理を作った。「とうま。なんだかいいにおいがするんだよ?」「あ!起きたかインデックス。スフィンクスのミルクはここにおいてるからちゃんと世話するんだぞ?いいか?」「わかったんだよ」「よしっ!できたぞ!今日は、もやしの和え物と、もやしの野菜炒めとご飯だ!」「最近、もやしばかりでほかのがたべたいんだよ。とうま!」「そんじゃ、いただきまs」 上条がご飯を食べようとするとき、頭に急激な痛みが伴った。インデックスに噛みつかれたのだ。きれいに歯形が残る。彼は思う。不幸だと。その加害者はいろいろ文句を言いながらひとりで二人分の皿を完食した。素晴らしい胃袋の持ち主である。ここから上条の腕の見せ所。どうやってこの不幸な場所から逃れるか。上条はインデックスにうその情報を流して、そちらに目を向けさせる。家の電話にでないようにもした。こうして、上条は第1関門をクリアしたのだった。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「あいつ遅いわね…」といっても待ち合わせより30分も前に来てるからだ。上条は約束通りやってきた。ただ歯形が気になる。「あんたは、ほんとに不幸だわ。私の幸せを貰っててよ?」「いいんですか?」「のまえに・・・」「前に?」「一発ぶちかませろやあああああああああああああああ!」 と上条に効くわけのない電撃の槍を放つ。上条は案の定右手で打ち消す。ただ、美琴はすっきりした顔でいう。「・・・あのね。アンタ今日暇なんでしょ?」「そうだ。だからここに呼ばれたんだろ?」「うん。・・・・つきあってほしいの。だめ?かなぁ?」 上条は上目遣いで迫ってくるこの生き物は何ですかといわんばかりである。これに断る理由もないためGoサインを出してしまう。「よし、決定ね。それじゃ、行くわよ」「行くって、どこへ?」「いいじゃない。どこでも!ほら!」 美琴に連れられゲーセンについた。すると、いきなり彼女から対戦するように言われたので上条は受けて立った。全てのゲームで美琴に敗れた(わざと負けてやったのもあったが)。その罰ゲームとしてプリクラをとることにした。「何で、上条さんとプリクラを取ろうと思ったんでしょうか…」「罰ゲームだからよ」「別にお前の友達でもよかったんだろ?」「アンタがいい・・・いいにきまってるじゃない」「いまなんと・・・」「何度も恥ずかしいこと言わせんなぁ!だから、アンタと一緒にプリクラ撮りたいの!」「なんだ。そこまで言うのなら男上条はひと肌脱ぎますよ?お前に全部任せるよ」「・・・(やった♪)」 プリクラの中ではなぜか美琴が赤くなって固まってしまったため上条がいろいろと操作をし出す。だが、上条のセンスが気に入らなかったのか、美琴はすぐに復活して操作を始める。上条は美琴の後ろに立って抱きかかえた。耳元で何かを言われた瞬間それが画像として残った。 上条は撮ったものを全て美琴にあげたが、記念だからと数枚切り分けたものをもらった。美琴は気付くと上条の胸の中にいた。「えへへ・・・これをブログに載せたいなぁ」「でも、目のところはちゃんと隠せよ?すぐばれるだろ?」「うん。でも、あんたの髪型は目立つから何しても無理だと思うわよ?」「そっか・・・ならそのまんまでいいんじゃない?」 この夜、美琴は携帯でブログの更新を始める。――――――――――――――――――――――――――――――○月△日(日) たのしかったよー!今日はね、私の愛しの王子様と遊んできたの #9825;それでねそれでね!!プリクラ撮るときにあいつがなんて言ったと思う?「以外にかわいいとこあんだな」だってさ。抱きついて耳元で言われちゃいました!んで、これが愛しの王子様でーす!・・・・・――――――――――――――――――――――――――――――そこに上げた画像は先ほどプリクラで撮ったものであった。二人とも不器用な笑い方して寄り添っている姿。「これでいいか。そんじゃ、ぽちっと」その瞬間メール着信の音が鳴る。上条からのメールだった。――――――――――――――――――――――――――――――やっぱり照れくさい。でも、楽しかったな。またな!――――――――――――――――――――――――――――――黒子がこれを見て騒ぎ出すのは別の話。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一端覧祭大騒動 ドンドン!という派手な音が良く晴れた青空に鳴り響く。 ここ学園都市が未だに戦争中であったなら、それによりかなりのパニックにもなったのだろうが、今現在はそんな事にはならない。 なぜなら今日この日は一端覧祭という一大イベント当日の朝であり、多少派手な音をあげても学生達のテンションを上げるだけだからだ。 しかし第七学区のとある病院の一室では、この音に対しあからさまな不快感を表している者もいるのだった。 「…………朝から何だこの音は」 そう呟きながらまだ半開きの目を擦る少女。 ウェーブのかかった肩まである黒髪はここ日本でも良く見られるものだが、その顔立ちや褐色の肌、さらにはゆったりとした民族衣装などはここでは珍しいものだ。 彼女の名前はショチトル。中南米系の魔術結社『翼ある者の帰還』の構成員でもある。 色々とあって今はここ学園都市で休養中なのだが、やはり科学にもある程度は精通している組織とはいえ、根っこは魔術サイド。ここにもまだ馴染めきれずにいた。 そんな時、まるで彼女が起きるのを待っていたかのように、コンコンという軽いノックの音が部屋に響く。 そしてショチトルが短く「入っていいぞ」とだけ答えると扉は静かに開かれる。 扉の向こうでは、背が高く、サラサラの髪に白い肌の少年が柔和に微笑んでいた。 外見だけでいえば常盤台中学の理事長の息子、海原光貴……しかしその正体はかつてショチトルと同じ組織にいたアステカの魔術師、エツァリだ。 「病室を間違えているぞ。私にはそんな育ちの良さそうな知り合いはいない」 「ははは、これは勘弁してくださいよ。こっちにも色々と事情があるので」 そんなショチトルの冷たい言葉に海原は頬をかきながら苦笑いを浮かべる。 この顔の方が色々と都合が良いというのもあるのだが、なんだかんだ長期に渡って変装し続けていることもあって、この顔にも慣れてしまっていた。 しかしかつての同僚であるショチトルからするとあまり気に入らないようである。 そして海原がベッド近くのパイプ椅子に腰かけるのを眺めながらいかにも不満げに口を開く。 「事情……ねえ。まぁ確かにその顔の方が女ウケは良さそうだな。 貴様がうつつを抜かす女子中学生にもさぞかし好評なんだろう?」 「い、いやいや何言ってるんです!?」 ジト目で尋ねるショチトルに焦りまくる海原。 もちろんこの変装はそんな俗っぽい理由でしているものではないのだが、確かにそういう風に思われてもおかしくない。 なぜならこのエツァリという魔術師は、その一人の少女のために組織を抜けたと言ってもなんら問題ないからだ。 「まぁいい。それで私に何の用だ?」 「いえ、調子はどうかなと」 「良くない。帰れ」 「上々のようですね。では今日は少し外を歩いてみませんか?」 「おい」 ショチトルの突き放しを笑顔でかわす海原。 普通だったら凹んでしまうかもしれないだろうが、海原は美琴のやんわりとした拒絶をも受け流していただけあって、少しも堪えないようだ。 一方ショチトルは自分の話をまったく聞いていない海原にかなり不満げな表情をしている。 「まぁまぁ、こんな病室に籠っているのもそろそろ退屈でしょう。 今日はせっかくの一端覧祭ですし、たまには気分転換もいいのでは?」 「……いちはならんさい?」 「あぁ、まだ知りませんでしたか」 すると海原は頭にハテナマークを浮かべているショチトルに説明を始める。 大雑把にいえば大規模な文化祭である事。 学校側からすれば入学者を集める為のものなので、多くの学校が解放される事。 特に名門校なんかは、入学する気がなくても見ていく価値はある事。 そんな事を詳しく丁寧に話す海原に、初めはいかにも興味なさげに聞いていたショチトルの表情が変わっていく。 しかしそれは関心を示すようになったという事ではなく、どこか呆れた様な顔になったという事だ。 「あぁどんなものかは大体分かった。 だが貴様はいつの間に学園都市のガイドになったんだ?」 「元々スパイのようなものでしたからね。ここの情報は結構持ってるんですよ。 それで、どうです? やはり気が進みませんか?」 「……一つ答えろ。私に何か隠していないか?」 急に真剣な表情になるショチトルにつられ、海原の顔からも微笑みが消える。 そのまま二人は少しの間じっと見つめ合ったが、終いには海原の方が少々目線を落として小さくため息をつく。 そして海原は顔を上げると、病室の窓の向こうに広がる良く晴れた青空を見上げながら口を開く。 「…………『太陽の蛇(シウコアトル)』に微弱な魔術反応がありました」 「何だと……?」 どこか他人事のように淡々と説明する海原に、目を鋭くして噛みつくようにさらに尋ねるショチトル。 しかし海原はそんなショチトルを見て小さく笑う。 「ですが本当にごく小さなものです。あれくらいなら偶発的に起きてしまってもおかしくはありません。 まぁしかしこのタイミングですし、一応警戒はしておいても良いかと」 「………………」 学芸都市での戦いでは猛威をふるったアステカの霊装、太陽の蛇(シウコアトル)。 もしあんなものが現在一端覧祭とやらで賑わう学園都市で発動されようものなら、どれだけの被害が出るかは想像がつかない。 だが本来学園都市は魔術サイドの敵。 あれだけの大規模霊装が展開され、科学サイドのボスに大きなダメージを与えることはこちら側とすれば都合の良い事のはずだ。 そのはずなのだが……。 『本当は、アンタだってこんなやり方がまともじゃないって事ぐらい、気づいてたんでしょ』 ショチトルの脳裏に、かつて自分の前に立ち塞がった一人の少女の言葉が甦る。 青白い翼で大空を飛び、ゲームセンターのコインなどというふざけたものを武器に強大な力を振るったあの少女。 だが彼女はそんな力を持っていながら、自分達の組織が行っていた暴力による解決を真っ向から否定した。 彼女は誰も傷つかない結末を望み、事件を起こした自分達ですら救おうとしていた。 そしてそんな甘すぎる考えは戦場では絶対に通じないはずなのだが、そんな彼女の言葉に確かに心を動かされた自分がいた事もまた事実だった。 「…………ちっ」 「どうしました?」 そんな海原の疑問には答えずに、ショチトルは病み上がりにも関わらず軽やかにベッドから下りると、部屋に備え付けられた洗面台で顔を洗い歯を磨く。 そして水滴をタオルで素早く拭い、さっぱりとした所で病室の扉に手をかける。 「ほら行くならさっさと行くぞ」 ショチトルは、思わず呆気にとられていた海原に一言告げると、扉を開け放って部屋から出ていく。 そんな彼女を追う海原が後ろでなにやら服装がどうとか言っているが、ショチトルの耳には届かない。 罪のない一般人が傷つくなんて事はあってはいけない。 幾度となく戦場に出向き、そこで人を殺めていったショチトルでもそれくらいは理解できていた。 (髪型……よし。服装……よし。だ、大丈夫よね、どこもおかしくないわよね!?) 一方同じ頃のとある自販機前。 一端覧祭でこんな朝でも人通りが多いその場所に、学園都市第三位の超能力者(レベル5)、御坂美琴は立っていた。 しかしその様子は明らかに挙動不審で、数分おきに鏡を取り出して髪型などをチェックしたり、服装を気にしたりしている。 といっても服装は常盤台の校則によりいつも通りの制服なのだが。 (えっと、待ち合わせの時間までは……後20分か。でもアイツの事だしどうせ遅れてくるんだろうな……) そわそわと腕時計を眺めながらそんな事を考える美琴。 なんだかんだここには一時間前に来てしまったのだが、待たされることよりも一緒に居れる時間が減ることが嫌だった。 幸い知り合いは誰も通りかかったりしていないが、こんな彼女の様子を見たら目を丸くするだろう。 頬はほんのりと紅くなっていて、いつもは肩に担いでいる鞄を両手で可愛らしく持ち、さらには目を少し伏せてモジモジしている。 そこにいるのはまぎれもなく常盤台のエースなのだが、今はただの恋する中学生になっている。 そしてその時、 「おっすー。悪い、待ったか?」 「ふぇ!?」 突然背後から聞こえた聞き間違いようのない声に飛び上がらんばかりに驚く美琴。 そして彼女がすぐさまグルンと音が聞こえるかというくらい素早く振り返ると、そこにいたのはやはりツンツン頭の高校生、上条当麻だった。 「ももももう来たの!? ま、まだ10分前よ!?」 「既に上条さんは遅刻常習犯てきなイメージがついてるんですか……」 やたらと驚く美琴に、頭をかきながらなんとも言えない表情を浮かべる上条。 その格好は一端覧祭用の学校紹介情報が詰め込まれた特注学ランという変わったものだったが、美琴は事前に知らされていたのでそれに対しては驚いてはいない。 上条としてはちゃんと10分前行動をしただけでここまで驚かれるとは思っていなかったのだ。 そこでふと上条にある疑問が浮かぶ。 「あれ、もしかしてお前結構待った? そういや前の罰ゲームの時は随分早くから来てたみたいだけどさ」 「えっ!? あ、その……」 突然の上条の質問に思わず口ごもる美琴。 以前までは楽しみすぎて一時間前から待ってましたなどとは恥ずかしくて素直には言えなかっただろう。 しかし今の彼女は違う。 この目の前の超絶鈍感男を落としてやると決意した恋する乙女なのだから。 「い、一時間前から待ってたわよ!! アンタ……とと当麻とのデートが楽しみで仕方なかったの!! 好きな人と少しでも長く居たかったの!!」 「お、おい!! そんな大声で……!!」 そんな上条の言葉にキョトンとする美琴。 だがふと周りに注意してみると、なにやらみんなニヤニヤしながらこちらを眺めているような気がする。 そう、普段と違い今は一端覧祭中。こんな自販機前でもギャラリーの数は多い。 (うひゃー見せつけてくれるねー!!) (おいおい、女の子の方は常盤台のお嬢様かよ!!) (キャー、あの子真っ赤になってる! カワイイー!!) (リア充爆発しろ!!!) 耳を傾けてみればこんな声も聞こえてきた。 もちろん美琴はオーバーヒート状態。上条が「じゃ、じゃあどっか行くか?」などとフォローを出すがそれも聞こえていない。 「あ、あはははははははははは…………うわーん!!!!!!」 「う、うおぉ!?」 そんな恥ずかしさの許容量を超えてしまった美琴は上条の腕を掴むと猛ダッシュでその場を走り去る。 後ろからは「がんばれよー!!」などというギャラリーからの応援の言葉が二人を追いかけていった。 「はぁはぁ……ったく、お前ももうちょっとは周り気にしろよな。せっかくレーダーみてえの使えるんだしさ。 てか前にもこんなことなかったか?」 「うっさい、うっさい!! お願いだから少し気持ちの整理をさせてえええ!!」 先程の自販機前から大分離れたとある路地裏。 そこには朝から突然の全力疾走に膝小僧に手をつき、肩で息をする上条と、真っ赤な顔のまま頭を抱えている美琴がいた。 さすがにここには先程のようなギャラリーもいないようだが、代わりにスキルアウトという別の方向にアツいギャラリーが出てきそうで内心上条の方は心配していた。 「……よし。私は当麻が好き!」 「ちょ、それ整理できてんですか!?」 「? なにかおかしい?」 気持ちの整理という作業から戻ってきた美琴が放った言葉に全力でツッこむ上条。 しかし美琴としてはこれが正常ということでいいらしく、満足そうにしている。 「まぁとにかく、ちょろっと面倒なことになったけど、ここからデートスタートよ! こんな人気のない所がスタート地点っていうのもなんかアレ……だけ……ど……?」 「おい? どうした?」 突然何かに気付いたのか、辺りをキョロキョロと見回し、本当に人気がないことを確かめる美琴。 そしていきなり顔を伏せると、ブツブツと何かを呟き始めた。 そんな彼女に上条はなにやら嫌な予感を感じとり、一歩後ろに下がる。 しかしそれとほぼ同時に美琴の顔がガバッ!と上がった。 驚くべき事にその顔には笑顔が浮かんでいた。しかしそれは子供が浮かべるような無邪気なものではない。 その笑顔はまるで欲望を全面に押し出したような不気味なもので、その周りにはドス黒いオーラも見える気がする。 そして美琴はその表情のまま一歩上条に近づくが、上条はまた一歩下がる。 上条はその表情に恐怖しか覚えなかったが、美琴の友人の初春や佐天ならある事に気付いただろう。 そう、美琴の今の表情は、白井黒子が愛しのお姉様の事を想い、「ぐへへへへへへ」などと言っている時のものとそっくりなのだ。 「ねぇ……いきなりこんなとこに連れ込んで……その……つもりなんでしょ……? 私、当麻とならいつでもいいよ?」 「い、いや、連れ込んだのはお前……ってちょっと落ち着け! とりあえず止まれ! ゆっくり話し合おう!!」 なおもこちらへユラユラと歩いてくる美琴を懸命になだめる上条。 決して出来が良いとは言えないレベル0の頭をフル回転させ、この状況をなんとかしようと精一杯考えるが、なかなか良い案が思い浮かばない。 その間にも美琴はどんどん近づいてくる。 「と、とうまぁ……その……私初めてだから……」 「……!? み、御坂あああ!!!!!」 「アン!!」 美琴は色々と危ない声をあげるが、決して上条が暴走したというわけではない。 追い詰められた上条がとった行動は、美琴の腕を掴んで路地裏から引っ張り出そうとしただけだ。 どんな誘惑をかけられても、男上条、中学生に手を出すなんて事は出来るはずがなかった。 そんなこんなで手を繋いだまま再び日の当たる太陽の下に出てきた二人。 しかし上条の顔には極度の焦り、美琴の顔には好きな人と手を繋いでいることからくる恍惚とした表情が浮かんでおり、とても対照的だった。 『いやーさすがカミやん。初っぱなから見せつけてくれるにゃー』 (うっせ! そんで今のとこ怪しいヤツは?) 『それらしいのは見当たらないな。まぁまだ一端覧祭は始まったばかり。気長にいこうぜい』 上条が使っているのは通信用の霊装。 一枚の紙を身に付けるだけで、わざわざ声を出さなくても相手と会話が出来る優れものだ。 幻想殺し(イマジンブレイカー)のせいで上条が使えるかどうかは微妙だったが、どうやら右手で紙を触れない限り問題なく使えるようだ。 そう、あくまで今回の目的は御坂美琴の護衛。 さすがに上条一人だけでは心もとないので、密かに土御門元春も二人の様子を遠くから監視し、怪しい者がいないか警戒していた。 ちなみにインデックスは小萌先生に預けており、ステイルと神裂が監視しているので問題ないはずだ。 『それにしても俺が監視してるんだから、さっきみたいなニャンニャン展開は止めてくれにゃー? エロ動画と違って親友のそんな所見せつけられても気まずくなるだけぜよ』 「んな事するかああああああ!!!!!!」 「わっ、何よ急に!!」 土御門の言葉に思わず大声で反応してしまう上条。 そしてそんな上条の隣でビックリとしているのは、今回のお姫様、御坂美琴。 あの路地裏から出て暴走状態は解除されていたが、デレデレ状態は続いているらしく、今は上条の腕に抱きついている。 そんな状態で大通りを歩いているので、周りからすればどう見てもカップルだ。 「い、いや悪い何でもない! ところでさっきから腕に何か柔らかいものが当たってまして、上条さん的にはとても落ち着かないのですが……」 「あ、当ててんのよ! 私だって最近ちょっと大きくなってるんだから!!」 美琴はそんな事を言って、その慎ましいながらも成長しているソレを上条の腕に押し付ける。 上条からすれば、いくら相手が中学生でも男にはないソレには反応せざるを得ない。 『どうだカミやん。感触的にはどのくらいありそうかにゃー?』 (んーまだA……いやBあるか? って何聞いてんだコラァァァああああああ!!) 土御門の言葉に心の中で全力でツッこむ上条。 そんな様子に美琴は首をかしげてハテナマークを浮かべていたが、上条は気付かない。 そしてとりあえず気を取り直した上条は、制服のズボンの尻ポケットから丸めたパンフレットを取り出す。 この一端覧祭は外部向けのイベントではないのだが、他の学区からの生徒もたくさん来るのでこのようなものも作られている。 「で、どこ行くか。確かお前の能力実演は昼だったよな?」 「うーん、そうねぇ……」 やはりレベル5ともなれば、学園都市でも七人しか認定されていないだけあって、その能力だけでも十分珍しいものがある。 有名校に見学しにくる生徒の中でも、そういった高位能力者の能力(ちから)を一目見ようという者も多い。 その為、常盤台ではレベル5第三位『超電磁砲』による能力実演などというイベントも用意されているのだった。 「じゃあ、当麻の学校は?」 「いっ!?」 そんな美琴の提案にうろたえる上条。 一応上条や土御門も「呼び込み、宣伝」という仕事をやっている。 この仕事は実質一番楽なものであり、サボって遊びまくっていてもこの宣伝用学ランを着ているだけで一応仕事をしていることにはなる。 しかしそれでも女の子を連れて自分の学校に乗り込もうものなら、それから起こる惨劇は目に見えている。 何より小萌先生に預けているインデックスと鉢合わせするという展開もありうる。 「う、うちはマズイ! てか全然大した学校じゃないし、来ても面白くもなんともないぞ!!」 「いや私は当麻はどんなとこに通ってるのかなって気になるだけなんだけど。 あとクラスメイトの女の子とか……」 宣伝役としてはあるまじき事を述べる上条だが、美琴はなおも興味津々といった様子だ。 さらにクラスメイト云々の時には何か黒いオーラが見えた気がする。上条の母親、詩菜も時折夫に向かって見せるものと同じようなものだった。 『別にいいじゃないかにゃー。彼女が行きたいって言ってるんだから連れていってあげればいいですたい』 (お前は俺を殺す気か!? てか絶対楽しんでるだろ!?) 土御門とはこんなやりとりをしている上条。 なんだかんだ美琴と直接話したり、土御門と霊装を通して会話したりで少し頭が混乱してきていたりもする。 だが頭の中に直接叩きつけるように入ってくる土御門の声には、そんな状態の上条でも分かるほど楽しげな調子だった。 「あーえっと、じゃあ長点上機! 学園都市でも最高峰の学校だし、きっと面白い事やってるぞ! それにお前なら十分入れるだろうし、一度見ておくのもいいだろ!」 「えーいや、まだ進学とか決めてないし……それにもし進学するなら……その……ってちょっと!?」 そんな事を言いながら美琴はチラチラと上条の方を見るが、上条には彼女が何を言いたいのかなど理解できない。 その代わり、我ながら良い考えだと言わんばかりに、勝手に行き先を長点上機に決定し、どんどん歩いていく上条。 美琴はまだ納得していなかったが、そのまま半ば引きずられるようについていくしかなかった。 第十八学区。 学園都市の中でもエリート校が多く存在し、独自の奨学金制度まで設けられている学区である。 そんな学区なので、普段なら無能力高校生、上条当麻なんかは場違いな所だ。 しかし現在は一端覧祭が開かれている影響で、学園都市の中でもこの学区は特に色々な人で賑わっていた。 なのでここ、長点上機学園にも多くの人で賑わっているのは当然というものだった。 そんな中、人混みの中でもやたらと目立つ常盤台中学の制服を着た少女、御坂美琴は不機嫌そうな顔を隠そうともせずに上条の腕にしがみついていた。 「だー!! だからこんなとこ嫌だったのよ!!」 「あーなんつーか悪かった……」 美琴の怒りの原因。それは度重なる勧誘だった。 おそらくエリート校なだけあってレベル5の顔くらいは知っている生徒も多いのだろう。 美琴がその校内に足を踏み入れた瞬間、それはもう能力を使ったのではないかというぐらいの早さで彼女は勧誘の渦に飲み込まれてしまった。 中には学生だけではなく教師まで加わっており、やはりそれだけレベル5というものを確保したいのだろう。 そして当然というべきか、無能力高校生の上条当麻は完全スルーだった。 「ちょっと、もっとくっついてよ! もう勧誘とかはこりごりよ!」 「いやいや、もう十分くっついてるから!!」 そんな勧誘の嵐に美琴が考えた作戦は「彼氏とベタベタして付け入る気をなくさせる」といったものだった。 美琴からすれば勧誘をかわせる上に上条ともくっつく事ができてまさに良い作戦だと思っていた。 しかし上条としてはこんなにベタベタされるのは気まずく、さらには彼氏認定もされるという事で溜め息をつくことしか出来ない。 それに勧誘が減ったのはこの作戦の効果というよりも、美琴の不機嫌な顔によるものが大きいのではないかと、密かに上条は思っていた。 レベル5を怒らせることの恐怖。それはきっとここの学生なら良く分かっているはずだからだ。 「あら久しぶりね」 どこからともなく突然聞こえた声に二人はキョロキョロと人混みを見回す。 すると美琴の方が先にその声の主を見つけたらしく、ある一点を見て首を止めた。 その目線の先にいたのは、長点上機の制服に肩まである黒い髪。そして少し不気味なギョロっとした目が特徴的な少女だった。 「あ、アンタは! たしか布束砥信……あぐっ!」 「み、御坂!?」 その少女に驚きの声をあげる美琴だったが、最後まで言い切る前にやたらとキレのいいドロップキックを腹にもらう。 そしてその側では上条が驚きの声をあげていた。 「前にも言ったけど、長幼の序は守りなさい。AND あなたは中学生、私は高校生」 「くっ……お、お久しぶりです布束先輩……!」 布束はそんな美琴に若干満足げに頷くと、今度は隣にいた上条の方に視線を送る。 こっちもどつかれるのか? と上条は思わず背筋を伸ばしてしまう。 しかし彼女は特に何もせず、だがやたら関心ありげにじっと見つめながら口を開く。 「あなたが例の無能力者ね」 「は、はい……?」 いきなり「例の」などと言われて混乱する上条。 しかし隣にいる美琴は何かを知っているらしく、やたらと真剣な表情で布束を見ている。 どこか蚊帳の外に置かれている感覚があり、この空間に居づらくなっていた上条だったが、そんな上条を置いて美琴が再び口を開く。 「やっぱり、知っているのね」 「ええ、私はしばらく学園都市の深い所にいたわ。equal 情報はいくらでも入ってきた」 美琴は布束の言う深い所という言葉に顔をしかめる。 おそらくその意味を理解しているのだろう、あれから布束がどんな世界にいたのか、そんな事を考えているようだった。 しかし布束の方は別段表情を崩さずに、相変わらずの無表情で淡々と言葉を並べる。 その単調さこそが、長くその世界にいたという証なのかもしれないが……。 そんな中上条はこの居づらさに限界を感じており、なんか面白いものでもないかと辺りをキョロキョロとしていた。 「あら、その表情、心配してくれているのかしら?」 「当たり前でしょ。アンタあの裏でヤバイことやって捕まったって聞いたわよ」 「……さすがのハッキング能力ね。でも私は平気。because 最近その世界は解体された」 「あのー何やらぶっそうな単語が聞こえるんですが……」 何とか会話に加わってみようとする上条だったが、やはりこの二人の話していることは少しも理解できない。 しかし何やら上条にでも分かるような危なげな単語が出てきていたので、黙っていることも出来なかったのだ。 「…………そう、それならいいわ」 しかし美琴はやはりそんな上条を置いてきぼりにして勝手に自己完結してしまった。 だがその表情はどこか穏やかなものに戻っていたので、まぁいいのか? などと上条はぼんやりと思っていた。 「ところでそこの彼とは恋人……というものなのかしら?」 「!? え、えぇ、そうよ!!」 「違うみたいね」 上条の「おい!?」という言葉を遮ったのは布束だった。 上条は自分の代弁をしてくれた事に感謝しつつ、このキッパリとした言い方に驚いていた。 というのも今はお互い少し離れているが、先程まで二人はこれでもかという程くっついており、むしろカップルではないという事の方が変だったからだ。 しかし美琴はそんな疑問よりも先に怒りの方が出ていた。 「ちょっと!!! 何勝手に決めつけてくれちゃってんのよコラ……あぐっ!?」 本日二度目の布束のドロップキックにうずくまる美琴。 そしてしばらくプルプルしてた後、若干涙目になりながら再び口を開く。 「な、何を勝手に決めつけてくれちゃってらっしゃるんでしょうか?」 それでもお嬢様かというような敬語に呆れる上条だったが、布束の方はひとまずこれで良しとしたらしい。 そして布束は説明のためか、美琴と上条を順番に指差す。 「まずあなたの顔が完全に動揺していた。AND そこの彼も私の質問を聞いた瞬間、不安な顔をしていた」 上条は内心舌を巻いていた。 一つの質問をしながら同時に二人の表情を読み取り、分析した上で正解を導き出すなどという事は常人には出来そうもない。 さすが長点上機だなどと感心していた。 そして美琴の方は、おそらく彼女のそういう力の事は知っていたのだろう。 明らかに悔しそうな顔をしていたが、反論できずにいた。 「……そんなあなた達に面白いものがあるんだけど、ちょっと試してみない?」 布束は突然そんなことを言うと、近くにあった教室の一つを指し示す。 二人は顔を見合わせたが、特に他に行きたい所もなかったので素直についていってみることにした。 布束に案内された教室は机が全て端に寄せられ、真ん中に大きなスペースを作っていた。 そしてそのスペースには、布束が考案した学習装置(テスタメント)に良く似た人一人が十分入れるような機械が二つ置かれていた。 そんな機械を見て顔をしかめたのは美琴の方だ。 「ねえ、まさか私達の脳を弄くり回したりしないわよね?」 「こんな公の場所でそんな事は出来ないわ」 美琴の疑いの目を、一言でかわす布束。 一方上条もまた、別のものを見て顔をしかめていた。 それは奥の黒板にかかれたこの装置の名称と、効果について書かれたものだった。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 『ドキッ☆ 最先端の想い人発見装置!!』 そこのカップルのあなた達! 日頃から愛の言葉を交わし合っている関係でも、その心の中までは中々分からないものでしょう!? 自分は本当に一番なのかな…………もしかしたら他に好きな人とかいるのかな…………。 そんな悩めるカップルのための次世代装置がこちらの『想い人発見器』!! ただこの装置の中に入って少し待つだけ! それでその人の心の中にある異性への気持ちの強さがランキングとなって表示されます! その検索幅は親からただのクラスメイトまで! ただし、ある程度印象に残っていないと表示されないので注意! さぁ隣の彼、彼女の一番は本当に自分なのか!? この装置でバッチリ確かめちゃってください!! ※これの結果によるトラブルに対して、こちらは一切責任を持ちませんのでご了承ください。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「……………………」 「ちなみにその宣伝文句は私の考えたものじゃないわ」 上条は笑顔のままダラダラと冷や汗を流しながら硬直していた。この機械はヤバイと本能が告げている。 ランキング一位が母親、二位が彼女というのならばまだマシだろう。 マザコンだなんだと罵られるだろうが、他の女が出てくるよりかはまだ関係回復の希望は十分にある。 しかし自分に当てはめるとどうか? 普通は特に気になる子がいない場合は、一位の可能性が一番高いのは、本人と長い間関わってきた母親だろう。 だが記憶喪失の上条は? 記憶喪失直後から親元から離れて寮生活の状態の上条は、実の両親よりもクラスメイトとの関係の方が長い。 つまり決して母親、詩菜の事が嫌いなわけではないのだが、一番に来る可能性は低いだろう。 そしてそんな上条が今までで一番接する機会が多かった異性といえば…………。 「あ、あはははははは!! いやーでもこれカップルでやるもんだろ? 別に俺らはそんなんじゃねーし……」 「やるわよ」 上条の逃げ道を素早く両断する美琴。 その表情は完全に覚悟を決めたものになっており、おそらく何を言ってもダメだろう。 そんな美琴の様子に上条はいよいよ切羽詰まった表情になる。 「な、なぁ!!! 別にこれってランキング一位が誰でも、そいつの事が好きって訳じゃないよな!?」 「えぇ、母親が一位というものもあったし、どれだけ大切に思っているかという感じね。 however それはつまり恋愛における優先度とも同義」 あらかじめ他の逃げ道を確保しようとする上条だが、これも布束の言葉によりそれも断たれる。 その間にも美琴は装置のすぐ側まで近づいており、腕を組んで上条を待っていた。 「ほら、早くしなさいよ。どうせなら一緒にやりましょ」 「…………はい」 上条はまるで死刑台に向かうような重い足取りで装置の元へ向かう。 近くで見ると、人一人がすっぽり入るそれは、まるで巨大生物が大口を開けて待っているかのようだった。 そして上条は最後の抵抗とばかりに若干涙目になりながら美琴の方を向く。 「な、なぁ、お前はいいのかよ? プライバシー大暴露されんだぞ?」 「別に見られて困るもんじゃないわ。当麻が一位ってのは絶対だし。 何、もしかして当麻は見られるとなんか困るわけ?」 「う、うぐっ…………!」 美琴の鋭い目線に思わず一歩二歩と後ずさりする上条。そして頭の中で美琴の順位の予想をしてみる。 おそらく極端に低いという事はないだろう。それなりに関わりも多かったし、頼りにする事も多かった。 だから最低でも五位以上……のはずだ。 しかし仮に五位であったとして、美琴はどんな反応をするだろうか? そこまで考えて上条は思考を停止した。 なぜならその結果、頭の中には美琴が怒り狂って電撃を撃ちまくる光景しか出てこなかったからだ。 「準備終わったわ。それじゃ入ってちょうだい」 布束の言葉が死刑宣告のように教室に鳴り響く。 美琴は特に怯むこともなく、装置に入る。 一方上条の方はビクビクしながら恐る恐るといった感じだ。 その装置は仰向けの状態で使うらしく、上条が近づくと透明な扉が後方にスライドして入れるようになる。 上条が装置の中に寝転ぶと、頭の上から何かヘルメットの様なものが下りてきて、頭全体をすっぽりと覆った。 そして次の瞬間、ピコピコ、ピコピコという一定のリズムの電子音が鳴り始める。 上条はそれで測定が開始されたんだと気付く。 (御坂の事だけ考えろ俺!! 御坂御坂御坂御坂!!) 上条はなんとか美琴を一位にしようと、無理矢理頭の中で彼女の事ばかりを考える。 おそらくこんな事をするのは上条が初めてでもなく、浮気がバレそうになった男も同じことをやったことだろう。 しかし上条の場合は、美琴とは恋人でもなんでもないのに、なんでこんな事をしているのだろう……と若干疑問にも思ったが、あまり余計な事を考えている余裕もない。 それからすぐ頭のヘルメットは外され、装置の扉が開いた。 時間にして一分あったかどうかだったが、上条にはその何倍もあるように思えた。 「解析結果はすぐに出るわ」 布束はその装置に繋げられたパソコンのキーをカタカタと叩きながら淡々と言う。 一方上条と美琴は今は装置の前に並んでたっていたが、その様子は随分とお互い違ったものだった。 まず美琴は明らかにワクワクしていて、占いの結果を待つ女の子といった感じだ。 だが上条の方は緊張しきっており、まるで出来の悪かった受験の合格発表を待っているような感じだ。 同じ機械を使ったのに、ここまで反応に差が出るのはなかなか面白いものでもある。 その時、ピピピッ!という音と共に美琴の入っていた装置がわずかに発光する。 そして次の瞬間、その装置は自身の目の前に、教室に貼ってある時間割りと同じくらいの大きさのモニターを表示した。 それは順位の隣に顔写真と名前、さらには本人との関係が書かれた『想い人ランキング』だった。 「うん、まぁ当然ね!」 「ははは…………」 その結果を見て満足そうに頷くのは当事者である美琴だ。 ランキングの一番上にはツンツン頭の高校生が写っている。 しかし上条の目線はその一つ下の人物の所で固定されていた。 その人の名前は『御坂旅掛』。関係は……父。 (うわーどう見ても気難しそうな感じじゃねーか……。絶対『娘はやらんぞ!』とかって言うタイプだ……) 大覇星祭には来ていなかったみたいだが、美琴と一緒にいる時は絶対に会いたくないと思ってしまう上条。 別に何も悪いことはしていないのに、何故かぶん殴られて吹っ飛ばされる光景が頭の中に広がる。 とその時、またもやピピピッ!という音が聞こえた。今度は上条の入った装置だ。 (き、きたっ!!) 思わずビクッと体を震わせる上条。 一方美琴の方はやたら真剣な表情になる。それがまた上条の不安を増大させる。 やがてその装置は美琴の時と同じようにモニターを表示させるが、その時点で美琴との違いがあった。その大きさだ。 美琴のランキングは教室の時間割りくらいだったのに比べて、上条のものは教室の床から天井まで届く巨大なものだった。 そして上条の生死を決定する、気になる一位の結果は…………。 「…………ほう」 (…………あはは、死んだ。死にましたよ、俺) 巨大なランキングの一番上。 ご丁寧に金の王冠マークと共に表示されている顔写真。 それは銀髪碧眼に白い修道服を着た外国人シスター。毎日顔を合わせている上条家の居候、もとい穀潰しだった。 表示されている名前は『Index-Librorum-Prohibitorum』。 ちなみに二位は実の母、上条詩菜。美琴は皮肉にもレベル5の序列と同じ第三位だった。 己の死を覚悟した上条は、短い人生だったなぁ……とランキングにある母親写真を見つめる。 写真の中の詩菜には笑顔が浮かんでいたが、何故かそれは『自業自得だからさっさと逝け☆』などと言っているようにも見えた。 「……いいわ。どうせあのシスターにはまだ勝てないと思ってたし、そこはこれから逆転するつもりだから」 「えっ!? そ、それなら……!!」 「でも私が怒ってるのはそこじゃない……!!」 「ひっ!!」 一瞬まさかのお咎めなしか!? などと顔を輝かせた上条だったが、その直後にドス黒いオーラに電撃を纏い始める美琴を見て体を硬直させる。 そして美琴はそんな恐怖のあまり動けない上条の元にユラユラと歩み寄ってくる。 顔は俯いていて良く見えないが、声と威圧感だけでもどれだけ怒っているのかが分かった。 「なーんでアンタのランキングってこんなにもデカいのかしら? てか女の知り合い多すぎでしょ、ねえ?」 「そ、それはその……色々と事件に巻き込まれるもんでして、その時に……」 そう、美琴が怒っている原因は上条の女性関係の交遊の広さだった。 それは学園都市だけではなく、外国にも及ぶ。 普段から上条にはやたらと女の影が多いと思っていた美琴だったが、ここまでの数は予想外だったのだ。 「それに何よ!! コイツにコイツにコイツにコイツ!!! そんなに巨乳がいいかコラァァァアアアアアア!!!!!」 「ちょ、落ち着け御坂!!」 ついに怒りが限界を迎えたらしく、いきなり顔を上げたと思ったら、青白い電撃が辺り一体にバチバチと炸裂し始める。 ちなみに美琴が指したのは、吹寄、風斬、神裂、オルソラなどだ。 一方上条としては自分の命のために、それとここが他校である事から、電撃騒ぎなんていうものは避けたいのだが……。 「いっぺん死ねええええええええええ!!!!!」 「不幸だああああああああああああ!!!」 次の瞬間、教室中を真っ白に染めるほどの電撃が迸り、いつも通りの大喧嘩が始まった。 この二人の場合、河川敷だろうが街中だろうが長点上機学園だろうが場所は関係ないらしい。 関係に少し変化があっても、こういう所はまったく変わらない二人だった。 「機械の近くで電撃は……ってもう遅いみたいね」 そんな美琴の攻撃の影響で黒い煙を上げ始めた装置を見て、布束はため息をついていた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/一端覧祭大騒動
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 プール プールの中心に、巨大な渦ができたのは突然。 その瞬間に動いていたのは4人だった。 「美琴!!」 「アイツ!!」 「クソッ!!」 「滝壺!!!」 上条と美琴は互いの視線を交差させると、もう一方に同時に視線を向ける。 「「インデックス!!!!」」 その時、美琴や一方通行を始め、LEVEL5の面々は、違和感に気づいていた。 (能力がうまく作用しやがらねェ) 魔術という結論に至ったのは、美琴と一方通行のみである。 (これは……危険ですね) むやみに暴発させて対応できるメンツばかりがいるわけではない。 さらに、 (流れが急に早くなりやがったな) すでにほぼ全員が流れに飲み込まれ始めている。 人と人とがぶつかる。 いつ、けが人や溺れる者が出てきてもおかしくない状況だ。 そんな中、必死にインデックスを抱えていた芳川に誰かがぶつかり、インデックスが腕からすり抜ける。 (しまった!!) 流れに飲み込まれ、インデックスと離れていく芳川の瞳に、その赤子を助ける影が見えた。 御坂美琴である。 彼女はインデックスを抱き上げることに成功した。 しかし、 (思ったより流れが速いうえに、人が多くて……) 何人もの人とぶつかった。そしてついに。 (しまっ……!!!) 誰かと背後でぶつかり、水中にインデックスとともに引きずり込まれる。 そして、しばらく水上に上がることなく水流に弄ばれた。 (せめて……この子だけでも) 美琴の息が限界に達しようというその時、ようやく、 あの右手が届いた。 ふと、プールから渦が消え、水面が静かになる。 そしてそこからいくつもの人影が現れた。 「ぷはぁっ!! はぁ、大丈夫か!! 美琴!! インデックス!!」 「はぁ、はぁ、なん、とか」 「う、ぇう、……びぇぇぇ!! ぱーぱ!!まーまぁぁあ!!」 呼吸を整え、ほっと一息つくと、上条は周囲を見回した。 「大丈夫か!! 滝壺!!」 「うん、ありがとう、はまづら」 「ありがとうあなたーってミサカはミサカはここぞとばかりに抱き着いてみる!!」 「もやしに助けられるほどミサカは落ちぶれてないのに、余計なことしやがって」 他のみんなも無事なようだ。 それを確認し、再び視線を2人に戻した、 安易に 「まって、こ、こっちを、見ないで」 そこには、涙ながらにこっちを見つめる美琴がいた。 そして、なにより、 胸の部分の水着がなかった。 両腕とインデックスで隠れてはいるものの…… しばし固まっていた上条は慌てて後ろを向く。 「み、美琴、とりあえず、オレの背中に隠れろ」 「う、うん」 そのまま3人はゆっくりプールの端に移動した。 上条が見回すと、逆方向の端に見覚えのある水着が浮いている。 人とぶつかったときにでも外れたのだろうか。 上条が打開策を探しながら視線を正面に向けると、 ある人物と視線が合った。 一方通行と、浜面仕上だ。 それを見た上条は、もう1度水着に目を向ける。 上条の視線を追った二人がそれを見たとき、二人の行動は早かった。 「おーい、ケガをしたやつ、体調がよくないやつはいないか!!」 そうやって大声を出した浜面に皆の意識が集中した一瞬で、水着が不自然な水流に乗って上条達のところへ届けられた。 「美琴、インデックスをこっちに、それなら、なんとか水着つけられるか?」 「う、うん、大丈夫」 その間、インデックスは、ずっと泣いていた。 ようやく落ち着きを取り戻した皆はプールサイドで上条の言葉に耳を傾けている。 「本当に、すみませんでした!!!!!」 深々と頭を下げる上条に、おずおずと佐天が確認をとった。 「じゃああの大渦はインちゃんの能力ってことですか?」 「ああ、そうだ、みんなを危険な目にあわせてしまった、ごめん!!」 全員の視線がその赤子に向かった。 「魔術は使っちゃだめって言ったでしょ!!」 真剣な瞳で抱っこしているインデックスを見る美琴、 「あう、うー」 「でも、……よかった、インデックスが無事で」 「う、うぅ、ご、ごめーちゃい……ううぅぅぅぅううふえええええええええ」 「よしよーし、キチンんとごめんなさいできたね、いいこいいこ」 会話の内容は聞き取れないが、それを見た周囲は、 「さすが御坂さんのご親戚!!」 「すっごい大きさだったね!!」 「当然といえば当然ですの」 「じゃあ、わたしたちが原因ってことじゃんな」 「まぁ、悪意はなかったけど、そうなるわね」 「そんなことより、小腹がすいたわ、浜面、鮭弁」 「わたしは超喉が渇きました」 「「先生!! 脱がないで!!」」 「しかし、プールの中と違い、ここは暑くて……」 先ほどのことなど、なかったことにしたのだった。 再び上条は深々と頭を下げた。 「「ただいまー」」 「たーい、まー」 帰宅して数十分後。 台所から部屋に戻った上条に穏やかな寝息が聞こえる。 「あらら、御坂さんや、インデックスはおねんねですか?」 「うん、はしゃいでたし、いろいろあったもんね」 一緒にベッドで横になっていた美琴は、静かにインデックスの髪をなでる。 そこに、上条は麦茶が入ったグラスを持っていった。 「ありがと」 「いいえー。そんじゃ先風呂に入るぞ」 「うん、じゃあ、晩御飯用意しとくね」 「おう、サンキュ」 上条は、ようやく、 1人になれた。 ほぼ崩れ落ちるように脱衣所で座り込む。 (グッジョブ!! オレ!! オスカー物の演技だったぞ!!) 体育座りのように体を縮め、頭をガシガシとかいた。 理解して(わかって)いた。でも納得して(わかって)いなかった。 彼女は…… 腕で目の部分はおおわれているため、上条の表情はうかがえないが。 頬は、赤い。 上条の頭は何度目になるかわからない回想に使われていた。 『まって、こ、こっちを、見ないで』 すらりと伸びた足。 水着からやや上のくびれ。 インデックスや、腕では隠しきれていない白い肌。 鎖骨。 細い腕 水の滴る髪。 潤んだ瞳。 鮮やかな唇。 理解して(わかって)いた。でも納得して(わかって)いなかった。 彼女は…… 御坂美琴は…… 異性(おんな)だ。 「おーい、一方通行、上条が何か菓子折りくれたじゃんよー」 翌日、黄泉川家にのどかな声が響く。 いちいちオレに報告する必要ねェだろ、という感情を口にしないよう踏ん張る。 ソファでの快適な時間を削ることを率先してする必要もないだろう。 「おや、まだ寝てるのか」 しっかし、なんだろうなこれーと悩む黄泉川をほっといて一方通行は考える。 おそらくあの律儀な奴らのことだ、チンピラのほうにも行ったのだろう。 「……引越しのご挨拶かなンかじゃねェの?」 起きていることを知られた一方通行は買い物に駆り出されるのだった。 聖ジョージ大聖堂。 そこに二人の人影があった。 「じゃあ、よろしく頼みにけり」 静かに、一方の気配が消える。 「さてさて、いったいどうしておりしかしら」 金髪が、その笑顔に誘われるように揺れた。 おまけ!! さんさんと、日光が彼をあざ笑うかのように降り注ぐ。 「了然、どうにもならないことは、わかっている」 以前、記憶を取り戻すカギを見つけた男は、その直後にそのカギの保護者二人によって意識を奪われてしまった。 「断然、動揺していたとはいえ、あのように声をかけたら、攻撃されても文句がない」 しかし、もう一度チャンスがあるならば……。 だが、奇跡は何度も起こらない。 ため息を吐く彼の耳に、正面から複数の声が届いた。 「いつまでついてくんのよアンタたち」 「わたしたちの目的地もこっちなのだーってミサカはミサカは全速前進!!」 「それは、超わたしたちのセリフでもありますよ、超第3位」 聞き覚えのある声があった。 そして、その集団の中に、その子はいた。 神はもう一度、その機会を与えてくださった。 「卒然、また会えたな。改めて自己紹介をしよう。私はこういうものだ。当然、記憶喪失のため、その名刺に書かれた名は本名ではないが、怪しいものではない証拠にはなるだろう。依然、よければ、その真珠のような赤子を抱かせてほし「フン」ごっがあああああああああ!!!」 比喩表現ではなく飛んでいった。 ベクトル操作ってすごいのだ。 「なンだあの変質者は?」 「大将の知り合い?」 「なんでなんの迷いもなくオレに振ったし!!?」 プールまでまだまだ遠い。 おまけ!! 上条当麻が脱衣所に入ったことを確認すると、 御坂美琴はようやく一息入れ、麦茶を飲みほす。 が、まだやることはある。 その後の彼女は神がかった動きで二人分のごちそうを作り終えた。 残像が見えるほどのスピードである。 そして、ようやく一息つくと、 ソファに飛び込みもだえ苦しんだ。 (ろ、漏電だけはしちゃだめ!!!) うつぶせのため、表情は見えない。 が、頬から耳、というか肌の見える部分すべて真っ赤である。 アイツが自分をそういうふうに思っていないのは知っている。 『妹とプールに来るとこんな感じなんだろうな、今日は存分に遊びたまえ妹よ!!』 しかし、 『大丈夫か!! 美琴!! インデックス!!』 あの時のことが頭から離れない。 たくましい脚。 鍛えられた腹筋。 傷だらけだが、しっかりとした胸板。 太い腕。 水の滴る黒髪。 鋭い眼光。 なにより、 (水上に出る時に、だ、だ、抱きしめてくれたし~~~~//////) この感情を1人になるまでよく我慢したものだ。 (わたしって、アカデミー主演女優賞もらえるんじゃないかしら!!) 主演男優はもちろんアイツで、内容はラブロマンスの、 と、彼女の妄想は続いていった。 「なあ、御坂さん、なぜかご飯が冷めてるんですが」 「そ、そうね」 「確かに今日はオレも長風呂だったけどさ」 「じゃ、じゃあしかたなくない?」 「まるでオレが脱衣所に入って5分後にできあがったような感じですが」 「き、気のせいよ」 「……まあ、うまいんだけどな」 「……う、うん、ありがと」////////// 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 5日目 前編 今思えば、今日は朝から何かがおかしかった。 一方通行からは「おめでとう」とだけ書かれた謎のメール届いていたし、 クラスに空気もピンと張り詰めていて、居心地が悪かった。 男子にも女子にも、終始睨まれている気がした。 おまけに吹寄からは何も言われずに、 自慢のおでこでスーパー頭突き(コマンド入力 : ← タメ → +P ※ 右向き時)をくらわされ、 土御門と青髪からは、顔を両サイドから殴るという、 愛と友情のツープラトン(コマンド入力 : 同じ強さの P+K 同時押し)をくらった。 いつものデルタフォースならば、どつきあいするにも理由がある。 例えばこの前は、 「やっぱり愛花タンは最高やね~ 他の二人もええけど、同級生の魅力には勝たれへんわ。」 「分かってないぜい、分かってないぜい! 年下で後輩の凛子ちゃんこそ至高の存在だろうが!!」 「お前らバカじゃねぇのか!? お姉さんキャラで包容力のある、寧々さん一択だろ!」 という口論が喧嘩にまで発展したのだ。 セーブをせずに電源を切るからそんな事になるのである。 結果、数学教師・親船素甘から職員室に呼び出される事になったわけだが、 喧嘩の原因を聞いて、彼女は翌日熱を出したという。 統括理事会のメンバー【ものすごくえらいひと】の娘さんに何してくれてんだ、お前らは。 だが今回は違う。 何の意味も無く殴られたのだ。 理不尽極まりない攻撃【イジメ】に対し、当然上条は抗議したが、青髪からは睨み返され、 土御門からは、腹に一物抱えたような笑みを返されるだけであった。 そういえば、小萌先生も何かおかしかった気がする。 妙にそわそわしていたし、目が合うと顔が赤面していたように思える。 おまけに宿題が終わらなかったのに、今日は補習も説教もナシだという。 それ自体は喜ぶべきだが、やはり腑に落ちない。 そう、今日は朝から何かがおかしかったのだ。 そして現在は放課後。 上条は教室の一番後ろで正座をさせられている。 それを囲むクラスメイト達は、まるで仁王のような顔で上条を睨みつけている。 ただ土御門だけは、笑いをこらえて小刻みに震えている。 今は笑ってはいけない。 笑ったら、『デデーン! 土御門ー アウトー』である。 「さて上条。 貴様にひとつ聞きたい事がある。」 仕切り屋の吹寄が尋問を始めた。 いや、上条の態度しだいでは拷問になるかもしれないが。 「単刀直入に聞くが、これは何かしら?」 吹寄は「この紋所が目に入らぬか」といわんばかりに、ケータイの画面を上条に見せ付ける。 するとそれを起爆剤に、クラス中の人間が、次々とケータイを取り出した。 もう、格さんだらけである。 そしてその全てのケータイに、例の写真が写っている。 (やっぱりこれか……) 上条は滝のように冷や汗を流してはいるが、特に驚いた様子は無い。 正座をさせられたときから、うすうすは気付いていたのだ。これから公開処刑が行われることを。 (おかしいと思ったんだよなぁ~! あの土御門が大人しくしてるわけがねぇんだよ!! しかもこっそり隠し撮りなんかしやがって~~!!) ヘビの大群に睨まれたカエルの上条。 だが彼は、数々の修羅場を潜り抜けてきたヒーローだ。 こんなときの対処法も心得ている。 「すいませんでしたーーー!!!」 流石は上条の血筋というべきか、彼は刀夜直伝、「めっちゃ土下座」をくりだした。 これは怒り狂う敵の前で、深々と謝罪する事で、敵の戦意を消失させるという立派な技である。 無差別格闘早乙女流では、これを「猛虎落地勢」といって、奥義にもなっている程である。 普段なら、大抵これでなんとかなる。 しかし吹寄は許してはくれなかった。 「質問に答えろ! こ・れ・は・な・に・か・し・ら!?」 土下座したままの上条に、吹寄は容赦なく、持っているケータイを上条の左頬にぐりぐりと押し付ける。 「何と聞かれても…事故としか……ていうかぐりぐりすんのやめて………」 「……恋人ではないの?」 「ではないです…はい。 あとぐりぐり痛い……」 それを聞いてクラスの女子達は、心の中で「なんだ、いつものフラグか」と、安堵の息を吐く。 その辺の理解力は流石に早い。 伊達に上条と一年近くも同じ教室だったわけではないのだ。 吹寄もなぜかホッとしていた。 これにて一件落着―― 「…でも。デートはしたんでしょ。昨日。上条君そう言ってた。」 ――しかけた空気を、姫神の一言が再び悪化させた。 「い、いや! デートっつってもそんな大したモンじゃないし! つーか異性の友達と遊びに行くなんて、よくある事だろ!?」 上条のふざけた意見に、男子共がブーイングを始める。 「無いわボケッ!!アホッ!!カスッ!!コラッ!!」 中でも青髪のひがみはハンパない。 お前ならしっとマスクになれるかもしれん。 吹寄も男子に混ざり、上条を罵倒していたが、 「よくあるだと!? だったら何で私は誘ってくれないのよ!!」 という一言でブーイングが止まる。 言った本人と鈍感な上条は気付いていなかったが、それは明らかにジェラシーが込められた言葉だった。 「う、うそや…カミジョー属性完全ガードが……A.T.フィールドが破られてもうた~~~!!!」 青髪をはじめ、数人の男子が次々と崩れていく。 おそらく、密かに吹寄を狙っていた連中だろう。 女子達からも、「吹寄さんもやっぱり……」と、ひそひそ声が聞こえてくる。 状況が飲み込めていないのは、上条と吹寄の二人だけだ。 絶対にフラグが建たない女性【ふきよせ】対、どんな女性にもフラグを建てる男【かみじょう】の、ほこ×たて対決は、 どんな女性にもフラグを建てる男に軍配が上がったらしい。 グダグダな空気に染まりかける中、姫神が吹寄に代わって上条の尋問を続けた。 「上条君。恋人じゃないって言ってたけど。今。付き合ってる人はいる?」 当然いるわけが無い。 上条の鈍感力が折り紙つきなのは、姫神だって知っているはずだ。 それでもやはり、上条の口から直接聞きたかったのだろう。 「いや、いねぇけど……」 「じゃあもし。上条君のこと。好きな子がいたら。上条君はどうする?」 「そりゃもちろんうれしいさ。 けどそんな人、世界中探してもいるかどうか……」 おかしい。 姫神の尋問は、上条を追い詰める類のモノではない。 むしろこの会話の流れは――― 「……だったら私が。上条君のこと…す。好きだったら……付き合ってくれる?」 は い ? 完全にクラスの空気が止まった。 姫神は基本的に無表情だが、ほんのり紅色に染まった頬と、かすかに震える両手から、かなりの勇気を振り絞ったことが伺える。 流石の上条でも、今のが告白だというのは理解できたはずだ。 だが、自分はモテるわけがないと頑なに信じ込んでいる上条にとって、 なぜ突然、姫神が告白してきたのかまでは理解できなかった。 なにか言わなきゃと上条が口を開いた瞬間、「ちょっと待ったー!」と、ねるとんのような掛け声が響く。 「あ、あたしも上条君、好きだよ!」 クラスの女子のひとりだった。 だがそれで終わりではない。 彼女に負けじと、「私も、私も」と、次々に手を上げる女子達。 ダチョウ倶楽部の「俺も、俺も」に似ているが、決定的に違うところがある。「どうぞ、どうぞ」が無いことだ。 いつもならあり得ないこの光景に、上条は慌てるどころか、むしろ冷静になっていた。 そして彼の灰色の脳細胞は、フル回転することで、ある結論を導き出した。 (これはまさか……精神操作系の魔術!? しかもこれだけ大勢の人間を一度に操るってことは、 「御使堕し」やヴェントの「天罰」みたいに、広大な術式が組まれてんじゃねぇか!? くそっ!! あの様子じゃ、頼みの綱の土御門までやられちまってるみたいだし、俺が何とかするしかねぇってことか!! それにしても敵の目的が読めねぇ……姫神たちにこんなことさせて、一体何を企んでやがるんだ!?) と、上条の思考はとんでもないところに着地した。 そんな役に立たない脳みそならば、三分割されてネバネバした液体の入った容器にでも入れられてしまえ。 とりあえず上条は姫神の頭に触ってみる。 相手が魔術なら、彼の右手が活躍するはずだ。 だが反応は無い。 今度は十字架に触れないように気をつけながら、姫神の全身をくまなく触ってみる。 だがやはり反応は無い。 当然である。 告白直後の女性に、返事もせず、ただただ体中をまさぐるという上条の奇行に、シュールすぎて誰もツッコめずにいた。 だが、姫神本人はさすがにたまらないので、仕方なく彼女がツッコんだ。 「あの…上条君。 その……やめてほしい。」 (やっぱりこの様子じゃあ、姫神たちは、自分がおかしくなってることに気付いてないみたいだな…… まずは「俺の事が好きだ」って錯覚を何とかしなくちゃいけないけど、 幻想殺しが効かないなら、術者本人を叩くしかないな。 けど、この場はどう治めるか……) 再び彼の脳は、ろくでもない結果をはじき出す。 (とりあえずは、諦めてもらう事が先決だ。 そのためには恋人をでっち上げるしかねぇ!! インデックス……はダメだ! 敵の狙いが魔道書とも限らない! この場にいなくて、敵が来ても対処できるほどの能力者で、魔術の知識が多少はあって、すぐに会って説明できる人物……) 上条は、呆然としている吹寄のケータイの画面が目に入る。 そこに写っている写真。 上条が無理やり押し倒し、強引に唇を奪っている(ように見える)人物。 (すまん!! 美琴!!) 追い詰められて花が咲く。あとは勇気とタイミングである。 「み、みんな聞いてくれ! さっきは恥ずかしくて、つい、いないなんて言っちまったけど……本当は彼女いるんだ!! 黙っててごめん!!」 「……誰? 貴様の彼女って………」 吹寄は搾り出すような声を出す。 自分でも驚くほど口が渇いていた。 そんな様子に気付くわけも無く、上条はあっさりと答えた。 「だからその写真に写ってる娘。 美琴っつって、常盤台のお嬢様なんだぜ? …って、制服見りゃ分かるか。」 上条の言葉を聞いて、泣き崩れる女子が数名。 ひどい者は、教室から駆け出す子もいた。 (うぅ……操られているとはいえ、やっぱ心苦しいモンがあるな………) 教室中ドエライ空気になったが、とりあえず収拾はついた。 上条はこのままフェードアウトしようと、そーっと教室を出ようとする。 だがそこに立ち塞がる者達がいた。 「カミやん……どこ行くねん、ワレェ……」 忘れていた。青髪を筆頭とする男子軍団だ。 どうも大人しいと思ったら、彼らはモップや箒など、各自それぞれ武器を調達していたらしい。 青髪などは、わざわざ野球部の部室から、金属バットをお取り寄せしている。 本気だ。彼らは本気で上条を殺しにきている。 だって、目が尋常じゃなく赤いもの。 背中に「天」とか「滅」とか浮かび上がっているもの。 殺意の波動に目覚めた青髪たちは、一斉に上条へと襲い掛かる。 上条はデビルバットゴーストで彼らをかわしながら、必死で逃げた。 そう、生き残る為である。 生存戦略、しましょうか。 遠くで爆笑している土御門を見て、魔術で操られているとか関係なく、ただ純粋にぶん殴りたいと思ったという。 上条は、命からがらハンター達から逃げ出した。 この逃走中は、捕まると賞金が無くなるどころか、命が無くなるという危険なルールである。 気が付けばここは、いつも御坂とよく会う例の公園だ。 必死に走っていたら、こんなところについていたらしい。 全速力で走ったせいで、口の中はカラカラだ。 指先がチリチリして、目の奥も熱い気がする。 上条は自販機に小銭を入れ、比較的まともな、ヤシの実サイダーのボタンを押す。 が、忘れてはいけない。 彼は不幸体質なのだ。 出てきたのは、あったか~いいちごおでんだ。 この寒い季節には、やはり温かい飲み物が欲しくなる。 しかし考えてみて欲しい。 冬にマラソンした後、はたしてコーンスープやおしるこに手が伸びるだろうか。 上条は無言のまま、いちごおでんをポケットにしまった。 帰ったらインデックスにでもあげよう。 そんな事を考えていると、向こうから人影が近づいてくるのが見えた。 追っ手かと思い、上条はサッと身を隠すが、どうやらクラスの男子ではないらしい。 常盤台の制服に、短めの茶髪。 上条がこれから会おうとしていた人物。 御坂美琴だ。 探す手間が省けたとばかりに、上条は御坂に駆け寄った。 だが御坂は、上条の存在に気付くやいなや、即座に踵を返し逃げようとする。 やはり、あの一件で相当嫌われたらしい。 上条は、御坂の腕をガッと掴み、逃げられないようにしてから話しかけた。 「すまん美琴!! この前のは、俺が全部悪かった!! 謝ってすむ問題じゃないけど、とにかくゴメン!!」 「べべべ別にいいわよ!!! あ、あれは事故だって分かってるし!!」 とりあえず許しは得た。 目を合わせないところを見ると、完全に許してもらったわけではないらしいが。 だが問題はここからだ。 謝った直後に頼みごとをするというのは、いくらなんでも都合がよすぎるし、相手が了承しないかもしれない。 しかしこちらとしても悩んでいる時間は無い。 一刻も早く、精神操作系の魔術師(笑)を倒さなければならないし、 早急に彼女役も見つけなければならない。 だがその前に、御坂も魔術に掛かっている可能性があるので、上条は一応確認してみた。 「美琴、ひとつ聞くけど……お前、俺のこと好きか?」 「バッ!! ババババカじゃないのっ!!!? そそそんなことあるわけないじゃない!!! バカじゃないの!!? あ、あ、あたしが何でアンタのこと、す、すすすす好きじゃないといけないのよ!! バカじゃないの!!?」 思いっきり拒否られた。 普通「バカじゃないの」は一度に三回も言わない。 どうやら美琴は魔術には掛かっていないらしいが、これだけハッキリ断られると、それはそれで傷つくものだ。 だが同時に安心もした。 これで頼みごとができる。御坂が断るかどうかは別として。 それは御坂にとって、とんでもない要求だった。 「頼む美琴!! (事件が解決するまで)俺の恋人(役)になってくれ!! 俺(がこの件を何とかする為)にはお前(の力)が必要なんだ!!」 御坂がその言葉を理解【ごかい】するのに、たっぷり30秒はかかったという。 上条が焦って言葉をはしょってしまったが為に、事態はさらにややこしく、混沌としていくのであった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
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とある盛夏の提琴独奏【ソロコンサート】 ここに一人のメイドさんがいる。彼女はお客様に対して、「いらっしゃいませ! こちら本日のパンフレットになります」と愛想良く対応しているが、お客様が離れて一人になった瞬間、憂鬱そうに表情を曇らせて溜息を吐いた。「…はぁ…今年も来ちゃったか………盛夏祭…」季節は夏。今年もまた、彼女はステージに立たなければならない。 ◇「平素、一般へ開放されていないこの常盤台中学女子寮が、年に一度門戸を開く日。 それが盛夏祭だ! 今日は諸君等の招待した大切なお客様が来場される。 寮生として、恥ずかしくない立ち居振る舞いを以って、 くれぐれも粗相無きよう御持て成しするように」という寮監のお決まりの挨拶を皮切りに、今年も盛夏祭が開催された。中学3年という最上級生になった美琴は、去年以上に尊敬と憧れの視線を集めるようになっており、今年も寮生代表に推薦され、バイオリンを弾く段取りとなっている。(このままパンフレットを配るだけで一日終わってくれないかなぁ…? …なんて、そんな事ある訳ないか……)去年も緊張してステージに出るのを躊躇っていたが、今年はその時の比ではない。何故なら、(……アイツも…来るのよね………)「アイツ」とは勿論、上条当麻の事である。今年も繚乱家政女学校が料理を監修しているので、そこの生徒である舞夏が、去年同様インデックスを招待したのだ。そしてインデックスが来ているという事は、その保護者(?)の上条も来ているという事である。ちなみに、オティヌスは人目に付く場所に出てきたら騒ぎになるので、上条の寮でお留守番だ。今頃はスフィンクスと仲良くケンカ(ただしオティヌスは命がけ)している事だろう。リアル・トムとジェリーである。去年は、ステージの裏で出会うまで上条が来ている事は知らなかった。知らなかったが故に、ステージ直前で彼とバッタリ会った時には、驚きのあまり逆に緊張も解れた。が、今年は違う。初めから来ると分かっていると、それはそれで緊張してきてしまう物なのだ。しかも今の美琴は、去年の盛夏祭の時期には無かった心の変化がある。(う~~~! ヘマして嫌われちゃったらどうしよう……)恋心である。絶対能力進化計画で妹達と自分の命を救われて以降、彼女は本気で上条に恋をするようになった。あれから約一年。彼女の中の恋心は失われること無く、むしろ膨らむばかりである。自分だけの現実に、大きく影響する程に。演奏を失敗したぐらいで上条が自分を嫌う訳がないとは分かっているのだが、それでも「万が一」という可能性を捨てきれない。「私って、いつからこんなに弱くなっちゃったんだろう…」と、本日何度目かも分からない溜息を吐く美琴。すると、二人のお客様が近づいてきた。美琴は気持ちを切り替えて、精一杯の営業スマイルを浮かべながら、「いらっしゃいませ! こちら本日のパンフレットになります」と二冊のパンフレットを取り出す。だがそこには。「こんにちは御坂さん! やっぱり雰囲気が違いますね! お嬢様の匂いがしますもんね!」「初春、興奮しすぎだよ。去年も来たじゃん。 っと、こんにちは御坂さん。相変わらず、メイド服姿が似合ってますね~!」「初春さん! 佐天さん! いらっしゃい、楽しんでってね!」 親友二人の来場に、少しホッとする美琴である。彼女達は去年と同じく、白井に招待されていた。そして件の白井はと言えば、「はーい…いいですわよー…オーケー…そのままそのまま…」とフラッシュをたきまくりながらカメラのシャッターボタンを押しまくっていた。いつの間に、である。彼女はどうやら今年も記録係に立候補したらしく、相変わらず何の記録なのか美琴の姿ばかりを写真に収めている。寮生は全員メイド服を着用する事になっているので、白井も美琴と同様メイド姿なのだが、あまりメイドさんにしてほしくない奇行である。一応補足しておくと、白井は誰に対しても変態行動を取る訳ではない。美琴限定である。だが美琴は、とりあえず白井を焼いた【ビリビリした】。「あっふん! ほ、本日もお姉様への愛が痺れておりますのっ…!」「二人はこの後どうするの?」「こことこことここ! それからこことここにも行ってみたいです!」「だから興奮しすぎだってば… とりあえず初春と適当に回ってみますよ。去年も来たから、どこに何があるか大体分かりますしね」白井はまだ軽口を言える程度の余裕はあるようだが、そんな彼女を放置して会話をする三人。一年以上も行動を共にすれば、変態さんの扱いにも慣れてくるという物だ。と、そんなタイミングで、「おーっす、美琴」と手をひらひらさせながら上条が来場してきた。一瞬にして顔を真っ赤にさせた美琴に、初春は釣られて赤面(上条に対してではなく、美琴が赤面した事でその理由を想像したから)し、佐天は何やらニヤニヤし始め、白井は上条に牙を剥いて「ガルルルル」と唸り声を上げた。「い…いら、いらっしゃいませ…」先程までの営業スマイルはどこへやら、顔を俯かせてボソボソと喋る美琴。上条はパンフレットを受け取りながら、いつものように冗談めいた事を言う。「あれ? その格好なら、『お帰りなさいませ、ご主人様』とかじゃないのか?」「こ、ここはそういうお店じゃないわよっ!」売り言葉に買い言葉。上条のいつもの態度に、美琴もつい釣られていつもの態度で言い返してしまう。すると上条はニカッと笑い、「ん! やっと美琴らしくなったな。…ったく、いっちょまえに緊張なんかしてんなっつーの」「~~~っ!!!」と美琴の頭をポンポンする。どうやら美琴が緊張している事を察した上条は、その緊張を解してあげる為に、美琴が軽く怒りそうな事をわざと言ったらしい。その結果、美琴は既に真っ赤だった顔を更に真っ赤にさせて、初春も釣られて更に赤面し、佐天は更にニヤニヤし、白井は上条に「キシャーッ!」と威嚇する。「ところで上条さん! 御坂さんのメイド服を見ての感想は?」このまま眺めているのも面白いが、もっと面白くなるように佐天が口を開いた。感想、と言われても上条にはこうとしか答えられない。「ん? 普通に似合ってるんじゃないか? すげー可愛いと思うし」「にあっ! かわっ!!?」上条からサラリと出てきたワードに、口をパクパクさせる美琴。佐天の策略通り、やはりもっと面白い事になったようだ。「はーい、もう時間切れですのー!」が、そこで我慢の限界を迎えた白井が両者の間に割って入ってきた。白井は上条を睨みつけると、「さぁ、もうお姉様への挨拶は済みましたでしょう! ならば、さっさと去ねや類人猿! ですの!」あまりメイドさんの口から聞きたくない暴言である。一応補足しておくと、白井は誰に対しても厳しい態度を取る訳ではない。上条限定である。と、そんな白井に一人の少女が話しかけた。 「おー、いたいた白井、探したぞー」上条とインデックスを招待した舞夏だった。「あー…悪いな。インデックスだけじゃなくて俺まで招待されちまって」「むー? 気にするな上条当麻ー。一人も二人も違いは無いぞー。 と言うか、あのシスターが一人で10人前も20人前も平らげているからなー。 料理長の源蔵さんも悲鳴を上げていたぞー」「……ウチの子がご迷惑をおかけして申し訳ありません…」インデックスは現在、上条と別れてビュッフェを満喫しているようだ。唯でさえレベルの高い料理なのに、それが食べ放題となれば、インデックスにとってはパラダイスであろう。「っと、そうだー。その件で白井を探しに来たんだったー。 白井ー、ビュッフェの手伝いはどうしたー? 去年もサボっていただろー」「うぐっ!? で、ですが今ここを離れる訳には…」自分が防波堤にならなければ、このまま愛しのお姉様と憎き類人猿が良い雰囲気になりかねない。白井としては、少なくとも上条が別の場所へ移動するまでは安心して他の仕事ができないのだ。「またそんな事言ってー。ほら、来るのだー」「あっ! ちょっ! お、お待ちくださいまし~!!!」だが舞夏はそんな白井もお構いなしに、襟を掴み、引きずる形で連れて行く。これで白井【じゃまもの】は消えた。佐天は「チャンス!」とばかりに美琴の持っていたパンフレットの束をひったくると、近くにいた他の寮生に声をかける。「すみません! これからあたし達、御坂さんに案内してもらうので、残りのパンフ頼めませんか!?」「勿論構いませんわ。ごゆっくりお楽しみくださいな」「ありがとうございます!」こういう時の佐天さんのアクティブさは、見習わなければならないと素直に思う。佐天はパンフレットをその寮生に託し美琴の下へ戻ってくると、舌の根も乾かぬ内に、「じゃっ! あたしと初春は二人だけで回ってきますので、 御坂さんは上条さんを案内してあげてください!」と言ってきた。「えっ……ええええぇぇぇぇっ!!? さ、佐天さん達を案内するんじゃないのっ!?」「言ったじゃないですか。去年も来たから、どこに何があるか大体分かるって。 でも上条さんは慣れてないみたいですからガイドが必要だと思うんですよ! ねっ? 初春もそれでいいでしょ?」「も、勿論私も構いません!」佐天ほど積極的ではないが、初春も美琴を応援する側である。佐天の提案に、初春は赤くさせたままの顔をコクコクと上下させて頷いた。「い、いや…でも…その…あの……」抗議しようとした美琴だったが、口を「あうあう」させるだけで言葉が出てこない。その隙に佐天は初春の手を引きながら、「じゃ、『頑張って』ください♪」と美琴に向かってウインクをした。初春もまた、佐天に手を引かれながらも上条と美琴に向かって会釈をする。しかしその会釈は、別れの挨拶という意味以上に、佐天と同じく『頑張れ』という、応援としての意味合いの方が大きかったのだろう。こうして美琴は、上条と二人っきりにされてしまった。ステージまでには、まだ時間がある。「じゃあ、せっかくだから案内してもらおうかな?」上条とのプチデートが始まった。 『仕方なく』上条を案内する美琴。しかし彼女は常盤台を代表する二人のレベル5の内の一人であり、この盛夏祭で、もっとも注目を浴びている人物だ。上条と二人で歩いているだけで、自然と視線を集めてしまう。「ご覧になって! 御坂様ですわ!」「お隣の殿方は、御坂様のお知り合いの方なのでしょうか?」「もしかして御坂様の好い人なのでは…?」「まあ! 流石は御坂様、大人の女性ですわ~!」おかげで周りでは「きゃーきゃー」と黄色い声が上がっている。美琴は頭から煙を出し、もはや爆発【ふにゃー】寸前だ。「な…何かゴメンね…? 周りが勝手に勘違いしちゃって……」「いや、俺は別に構わないけど… つーか俺の方こそゴメンな。美琴が有名人だって気付くべきだった」「わっ! わわわ私は気にしてないからっ! むしろ………えと…その…」『むしろ』の後がうまく出てこない美琴である。しかもテンパりすぎて、上条が「俺は別に構わない」と言った事も聞き流してしまう始末だ。「と、とりあえずどこか入りましょうかっ! このままウロウロしてても始まらないし!」と理由付けをしている美琴だが、真の理由は「このまま周りから煽られ続けたら、本当に『ふにゃー』しかねないから」である。美琴は咄嗟に、近くにあった「茶道体験教室」と書かれたブラックボードに目を向ける。「こ、これ! これやりましょ! 暑い日に飲む熱いお茶ってのも乙な物なのよ!?」必死である。「ああ、いいぞ。お茶なら周りも静かだろうしな。 けど俺は茶道なんて全然分かんないから、手取り足取りのご指導でお願いしますぞ? 美琴センセー」「ててて、手取り足取りいいいいぃぃ!!?」頭の中で、体を密着させながら教え合う自分と上条の姿が思い描かれ、益々テンパる美琴であった。 ◇しゃかしゃかと茶筅を使う音が教室に響く。メイド服の少女が、茶室(に改造された教室)で茶を点てる光景は中々にシュールではあるが、それを感じさせない程に美琴の姿は板に付いていた。上条も見惚れてしまう程に。先程は軽い気持ちで「手取り足取りのご指導」なんて言っていた上条だったが、この雰囲気に思わず緊張してしまった。(う~、なっさけねぇ~…美琴に『いっちょまえに緊張なんかしてんな』とか言ったくせに、 俺が緊張してちゃ格好つかないよな~……けど美琴が何かいつもより綺麗に見えるし… いや、お嬢様なんだから茶道の嗜みとかもあるんだろうけど、普段とのギャップのせいかな?)そんな事を思われているとは露知らず、美琴はお茶を差し出す。「ど、どうぞ…」「あ、いただきま…じゃなくて、えっと……お…お手前頂戴いたします…」上条は周りの見よう見まねで茶碗を数回まわし、恐る恐るお茶を口に運ぶ。すると、「っ!? 美味ぇ! 何だコレ、苦くない! いや、苦いは苦いんだけど、ほんのり甘味があるような…? 高い抹茶使ってるからなのか、美琴の淹れ方が良かったからなのか… もしくは両方なのかも知れないけど、とにかく美味いよ! 素人の俺でも分かるくらいに!」あまりの美味しさに大声で絶賛してしまった。厳かな空気が台無しである。しかし上条の素直すぎる感想に美琴も「ぷっ!」と吹き出してしまい、幸か不幸か、ようやくいつも通りの関係に戻れた。 「あはは! まぁ、喜んでもらえたなら何よりだわ!」「…何だかバカにしているように見えるのは、ワタクシの気のせいでせうか?」「気のせい気のせい! そう見えたならゴメン!」カラカラと笑う美琴に若干の不満を持ちつつも、「まぁ、やっと笑ってくれたからいっか」と安堵にも似た溜息を吐く上条。「あ、そうだ。ゴメンついでにもう一つ謝っておくけど、 ちょっとこの空気じゃ色んなトコ案内できなさそうかも」「ああ、いいよいいよ。また俺と一緒に歩いてる所を見られて、騒ぎにしたくないもんな。 俺なら、美琴のステージの時間までずっと茶室【ここ】にいても平気だから、気にすんな」「そ、そう? そう言ってくれるとありがたいけど…」「それに―――」すると上条は、少し照れくさそうにして言葉を続けた。「…それに、美琴と一緒にいるだけで退屈なんてしないからな」「っ!!!」何故この少年は、自分が言ってほしい言葉を当たり前のように言ってくれるのだろう、と美琴は思った。顔に熱が帯びてくる。それは夏の暑さのせいでも、茶の湯の熱さのせいでもなく。その後二人は、美琴のステージの時間まで特に会話する事もなく、お茶を飲み続けた。しかし二人の間に流れる沈黙は、何故か心地の悪い物ではなかったという。 ◇「じ、時間だから、私もう行くね!?」「ん? ああ、もうこんな時間だったか。分かった、頑張れよ」ステージの時間が迫ってきたので、美琴は着替える為に立ち上がる。「じゃあ、俺はどうしよう。観客席で待ってた方がいいのかな?」流石に着替えを手伝う訳にはいかない。そもそも一緒に歩くだけでも騒ぎとなって美琴に迷惑がかかるので、上条はここで美琴と別れようとする。しかしここで、美琴が思いも寄らない事を言ってきた。「……い…一緒にわた、私の部屋…に………来…て、くれない…かな…?」「………へ?」上気させた顔を俯かせて、目にはうっすら涙を溜めて、モジモジしながらも精一杯の素直な気持ち。先程までの時間でいい雰囲気になれたので、またツンツンとした態度を取ってしまう前にと、美琴は頑張って勇気を出した。「え、いや…でも……」「ド、ドレス! 着替えたら一番にアンタに見てほしいのっ!!!」どういう訳か、美琴はドレスアップした姿を一番初めに上条に見てほしいのだと言う。理由は分からないが、美琴がここまで言うのだから、何か特別な意味があるのだろう。と、一応上条も理解した。「どういう訳か」とか「理由は分からない」とか「何か」とかが普通に出てくる辺り、やはりそこが上条の上条たる所以なのだろう。上条と美琴は、茶室を出てそのまま美琴(と白井)の部屋に向かった。その道中…更には二人が一緒に部屋に入る所を他の寮生に目撃され、大騒ぎになったのは言うまでもない。 ◇「お、おおぉ…」「な、何よそのリアクションは……良かったの!? 悪かったの!?」美琴の部屋に通された上条は、そのままベッドの上に座って待たされた。美琴の着替え待ちだ。ちなみに、部屋には上条がいるので、更衣室の代わりとしてバスルームを使用している。しばらくしてバスルームから出てきた美琴は、これから行うバイオリンのソロ演奏の為に、ドレスを着飾っていた訳だが、あまりの美しさに上条は、「おおぉ…」としか言えなかったのだった。「いや、その、何つーか……すっげぇ綺麗で…えと、うまく言葉が出てこなかった…」「えっ!? …そ、そう………あ、りが…と……」上条が「かあぁ…」と赤面するのに釣られるように、美琴も「かあぁ…」と赤面する。しかしここで、美琴のドレス姿を見て何かを思い出した上条が、ふとこんな事を言ってきた。「…ん? あっ、そう言や去年のあの時の女の子って、もしかして美琴だったのか!?」「へ? いや、そうだけど………えっ、何!? 今まで忘れてたの!?」あの時の出会いはフライングのような物で、上条にとっては記憶を無くしてから初めて美琴と会話を交わした瞬間だったのだが、すっかりと忘れ去られていた。上条が覚えている美琴との一番古い記憶は、自販機にハイキックをかました、例の「ちぇいさーっ!」事件だ。あの時は偶然とはいえ、自分の為に緊張を解してくれたという思い出があるだけに、普通に忘れられていた事は地味にショックな美琴である。しかしフォローする訳でもないと思うが、上条は頭をポリポリと掻きながら。「あー、悪い。全っ然気付かなかった。多分、その後に会った美琴の姿とかけ離れてて、 盛夏祭で出会った人だとは思わなかったんだろうな」「何よ…そのちょっと嬉しいような、全く嬉しくないような理由は……」「だからゴメンって。ほら、一年前の時の美琴…つーか今の美琴もだけどさ、 正直、思わず見惚れちまうくらい綺麗だったから、 美琴と別人だって認識しちゃっても、仕方ないんじゃないかな~って上条さんは思う訳ですよ。 …ま、いつものミコっちゃんはいつものミコっちゃんで、別の魅力があるんだけどな」「なっ!!? ……ば…馬鹿ああああぁぁぁぁっ!!!」サラサラと出てくる嬉しい言葉の数々に、もう顔を合わせられなくなってしまう美琴。結局そのまま美琴は飛び出し、ステージへと走って行ってしまった。これ以上、上条と話していると演奏どころではなくなりそうで。 ◇この日、ステージで美琴が弾いたその曲は、アントニン・ドヴォルザーク作曲の『糸杉』。あまり有名な曲ではないが、美琴はどうしてもこの曲を弾きたかった。ドヴォルザークは、片想いをした相手に素直に告白できなかった為、その想いを込めて「糸杉」を作曲したのだという逸話が残されている。美琴は、どうしてもこの曲を弾きたかったのだ。そんなエピソードは勿論、曲のタイトルや作曲者も知らない上条は、観客席で「綺麗な音色だなぁ…」と思いながら、演奏する美琴を眺めつつ、ほんのりと顔を熱くさせるのだった。
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バレンタインネタ バレンタインデーそれは女の子にとっては年に数回あるかないかの想いを伝えるタイミングの日。バレンタインデーそれは男の子にとって好きな女の子からチョコ&告白を(貰える)されるかもしれないイベントの日。そんなイベントは科学技術が外の世界よりも2、30年進んでいる学園都市でも行われる。まぁ不順異性交遊に繋がる可能性があるため基本的には禁止なのだが。常盤台中学の寮に、とあるツンツン頭の少年に恋焦がれる乙女がいる。御坂美琴、超電磁砲(レールガン)の異名をもつ中学2年生にして、7人のレベル5のうちの第3位。そんな近寄りがたい肩書きを持っていてもやっぱり年頃の少女には変わりない。美琴は明日のバレンタインデーの為にチョコレートを作っていた。そのチョコレートも、もうあとは文字をホワイトチョコで書いてラッピングして完成という段階までできていた。美琴「アイツ、甘いの好きかな…」美琴「気に入って貰えるかなぁ」美琴「もし、渡すのと一緒に告白なんてできたらなぁ……えへ、えへへへ」黒子「お、お姉さま?そ、そそ、それは、わたくしへのチョ、チョコでございますか!?」美琴「!!」(黒子!?いつのまに後ろに…てかさっきの聞かれた!?)美琴「く、黒子…ど、どうしたのよ、今日はジャッジメントの集会じゃなかった?」黒子「いえ、お姉さまへ渡すチョコの中に媚や……いえ、隠し味を入れようと」美琴「……黒子…あのパソコン部品なら昨日のうちにゴミに出しておいたわよ?」黒子「………(汗)」(あらら、ばれてましたの)美琴「………(電)」(ったく、こいつはいつもいつも!一回〝真っ黒子げ〟にしてあげようかしら)美琴は弱めの電撃の槍を放った。しかし黒子は美琴の雷撃をテレポートで冷静に交わし、逃げた。黒子「お姉さまの攻撃パターンは何回も見たり当てられたりすれば身体が覚えますわ」とテレポート。黒子「まぁ手加減してくれているのでしょうけど、さて黒子はジャッジメントの集会がありますの」黒子「今日、明日は泊りがけで行ってくるので」とテレポート。黒子「お姉さまへのチョコはバレンタインデーが終わってからになりますけど、申し訳ありませんの」美琴「ん?まぁいいわよ、ただ変な物入れたりしたらアンタをこの部屋から追い出すからね!」黒子「うっ、しょ、承知しましたの。では」どうやらテレポートでジャッジメント本部に向かったみたいだ。美琴「ふぅ、さてチョコレートの続きを……あれ?」さっきまでの作りかけのチョコレートが無くなっていた。美琴の脳内で三つの仮説が生まれた。①、黒子とのバトルで間違って吹っ飛ばしてしまった。②、黒子が隙を見て盗んだか。③、その他の理由で紛失したか。美琴「………②だな」美琴は途方にくれた。今日は13日、町中の女の子がチョコを作るためたくさんの市販のチョコを求めて買いに走るであろう事は知っていた。だから美琴は使う分のチョコを3日前に買っておいたのだ。しかし、そのチョコもさっきの作っていたのに全部使ってしまいもう残っていない。今の時間は夜の9時、黒子がいればテレポートで送り迎えができた。いやそれはもう無い可能性だから考えないようにしよう。どうする。寮の電子ロックや防犯カメラはいじくれる。考え込んでいてもしょうがないしコンビニでも見に行ってみよう。と決めた。30分後、「ありがとうございましたー。」美琴「はぁ…板チョコ1枚しか売ってないって……わたし、不幸かも」と嘆いていた時、後ろから声がかかってきた。??「あれ?御坂?こんな時間にコンビニ寄ってなにしてんだ?」美琴はビクっとして恐る恐る振り返る。そこには今、会ってはいけない人物がいた。ツンツン頭の少年、上条当麻だ。美琴「あ、アンタこそ、こんな時間に何うろついてるのよ」当麻「ん?あーうちの寮な風呂ぶっ壊れちまってよーシャワー使えんだけどたまにはお湯に浸かりたいんで近くの銭湯まで行ってきたんだ」当麻「そういうお前は、何買ったんだ?」美琴「な、なんでもいいでしょ……お、お菓子よ、お菓子!。……そうだ、アンタ明日は時間ある?」当麻「明日か?まぁ日曜だしな。それにインデックスもイギリスに帰っちまったし、時間ならいくらでもあるぞ」美琴「そっか、明日は日曜だったわね。」(黒子は部屋にいない。明日は休み。あのシスターはイギリス)ぶつぶつぶつ……当麻「どうした御坂?さっきからぶつぶつ言って」美琴「決めた!今日アンタの寮に泊めて」当麻「……は?」(な、なんだって?寮に泊まる?部屋は?ん、この場合俺の部屋になるのか?)美琴「だから!アンタの部屋にあたしを泊めてって言ってんの!おわかり?」当麻「お前、本気で言ってんのか?」美琴「こんなこと冗談じゃ言わないわよ」といいながら身をぶるぶる震わせる。当麻「わかった。こんなとこにいると寒くて風邪引くからはやく行くぞ」美琴「やった♪」そういいながら上条の右腕に抱きついた。当麻「おい…これじゃまるで……」美琴「なによ?まるでカップルみたい?いいじゃない別に寒いんだし」当麻「俺は構わないけど、他の人に見られて困るのお前だろ?」美琴「か・ま・わ・な・い・わよ♪」(ちょっと大胆かな?恥ずかしくて顔上げれないや)当麻「はぁなんか今日は最後の最後に御坂に振り回されてんな」美琴「文句あるわけ?」当麻「いや、たまにはこんな幸せ桃色空間も悪くないかな?っと」美琴「??よくわからないけど早く行きましょ」当麻「そうだな」そうして上条の寮について少しすると御坂美琴と上条当麻の2月13日は終わりを告げた。2月14日、午前0時27分上条当麻と御坂美琴は上条の部屋のこたつの中にいた。美琴「当麻の寮ってちょっと遠いわね」当麻「ん?今名前で呼ばなかった?」美琴「あ、ダメ……だったかな…」(そうよね、いきなりはダメよね)当麻「う~ん、かまわねぇよ、むしろアンタとか呼ばれるより名前の方が気付きやすいかもな」美琴「ほんと?え…っと、とぅ…とぉま?」(うっ意識すると言えなくなる……)当麻「なんか、お前の言い方…ちょっと可愛くて照れるんだが……」美琴「え?可愛い?あたしが?」当麻「うー、なんだ…ほら、あ、そうだ!みかん食べようぜみかん、ちょっと持ってくる」上条はそう言うと台所にあるダンボールの中のみかんを取りに行った。美琴「……うまく話し逸らしたつもりかしら…」当麻「ほらよっ、このみかんすっげぇ甘いんだぜ。結構オススメ」美琴「ふーん。それよりさ、と、当麻って呼ぶから、わたしのこと美琴って呼んでよ」当麻「……はい?」美琴「ビリビリしないと理解できないのかな?そうかぁ…なら仕方ない。手加減してあげるから左手だしなさい」当麻「ひぃ!いいです!理解できました。ごめんなさい!美琴!」美琴「そうそう。ちゃんと言えるじゃな……ぃ…」(こ、これは予想以上に恥ずかしい……)当麻「どうした?おーい?大丈夫かぁ?美琴?」美琴「だ、大丈夫よ!」そのあと、テレビを見たりして二人でぎゃあぎゃあ騒いでいた。美琴「ふぁ…眠くなってきちゃった……」時刻はもう深夜の1時を過ぎていた。当麻「そうか、ベッド使っていいけど、美琴は風呂入ってきたのか?」美琴「うん…今日はご飯たべて……すぐ…お風呂入ったから大丈夫ぅ」当麻「わかった。じゃあ寝るとしますか」美琴「……ねぇ」上条はコタツを端によせて布団を敷いていた。当麻「どうした?明かりなら今消すからちょっと待ってくれ」美琴「そうじゃなくて……ベッドでさ…一緒に寝ない?」当麻「……上条さんに拒否する権利は?」美琴「当然…なぃ…一緒に寝てくれないと…夜中電気ショックで起こすかも……」当麻「仕方ないな。添い寝くらいならしてやる」美琴「じゃあ、手…握っててくれる?」上条はこのお姫様の言う事をきかないと後が大変そうだと思い、しぶしぶ美琴の申し出を受け入れた。当麻「かしこまりました。姫」そう言うと、上条は部屋の明かりを消し、美琴の寝ているベッドに入りこみ、美琴の手をギュッと握った。美琴「えへへ~……幸せ……むにゃむにゃ」(zzz)当麻「………」(ったく、手握るなり直ぐに夢ん中入ってやがる)当麻「………」(はぁ、こっちは緊張して、手握ってるからか全然眠くならないし)当麻「………」(あれ?手離れねぇ…うわぁ、寝たらベッド出ようと思ってたのに…)美琴「…もぅ…」当麻「……?」(もう?)美琴「…はにゃさにゃぃんだかりゃ~……うんん…むにゃむにゃ」(zzz)当麻「………」(……可愛い…あれ?手離れてるじゃん……)当麻「…仕方ないな」上条は少し離れてしまった少女の手を捕まえてまた握った。当麻「………」(今日だけ特別だからな)美琴「………」(ぁりがと、当麻)その夜少年が自分の精神との格闘に見事打ち勝ち、寝れたのは3時間後のことだった。 2月14日、午前8時5分美琴「…ぅま……ねぇ…おきて、当麻」当麻「んぁ?……あれ?御坂?」バコッ!上条は美琴に頭を叩かれた。当麻「痛ッ…起きたばかりの上条さんになにすんだ!」美琴「昨日言った言葉、もう忘れちゃったの?」美琴はジーっと上条を見つめて涙目になっていた。当麻「…昨日って?……あ」美琴「思い出した?だったら許してあげる」当麻「わりぃ美琴、まだ名前で呼ぶの慣れないし、ちょい恥ずかしいんだ」美琴「そりゃわたしだって……まぁいいわ。ご飯作ってくるから待ってて」当麻「え?いいの?あ、でも俺もなんか手伝うよ」美琴「手伝わなくていいわよ。その代わりに後でご飯の感想聞かせて頂戴?」当麻「あ、ああ。わかったよ」美琴「じゃあ作ってくるわね」当麻「……」(昨日の今日だから妙に美琴を意識しちまうなー)美琴「ふん♪ふん♪ふーん♪」 朝食後当麻「ごちそうさまっした」美琴「お粗末さま」当麻「美味しかったぞ、美琴。こんな美味いなら毎日にでも食いたいな」美琴「ま、毎日って…そ、そこまで言うならたまに作りに来てあげてもいいわよ?」当麻「本当ですか?美琴センセー……あ、でも朝はいつも時間ないから諦めるよ…」美琴「あ~そっか…夕飯ならどうかな?」当麻「そうだな、じゃあたまにだけどお願いな」美琴「ねぇ当麻?その、代わりと言っちゃなんだけど、ご飯作ってあげるからその分泊まりに来ちゃダメかな?」当麻「なっ!美琴…自分が何言ってるかわかってるのか?」美琴「あ、あたりまえでしょ!こんなこと当麻にしか言わないわよッ!」当麻「え?それは…つまり……え?…そういうこと?」美琴「あれ?あたし…なんか言っ……」(これって…こ、告白と思われても不思議じゃない?あーもうダメ!考えてもダメ!行動しなくちゃ!)美琴「…もう、がまんできない!言うわよ!わたしはね、アンタが、当麻が好き。もう自分の気持ちをごまかしきれない、当麻が大好きなの!」美琴「今日が何の日か知ってる?バレンタインデーよ、女の子が勇気を出す日なの。本当はチョコあればよかったんだけど、黒子に持ってかれちゃったの。でもねチョコなんかなくても気持ちを伝えることはできる。当麻はちゃんと言葉で言わないと気付かないと思ったから…」当麻「…………」美琴「…………」当麻「……美琴」美琴「………迷惑…だったかな…あはは…」美琴の声は今にも泣きだしそうな声だった。美琴「…ごめ…んね…朝から……わたし、帰るわね」そう言って、立とうとしたとき、上条の口が開いた。当麻「待ってくれ。ちゃんと返事させてくれ、美琴」美琴「…うん」当麻「まさか、お前が俺のこと好きなんて思わなかった。せいぜい仲の良い異性かな、くらいで終わりだと思われてると勝手に勘違いしてた」当麻「でも、こうしてお前、美琴が伝えてくれたから。まぁこんな話は言い訳にしかならないな」当麻「…結論から言うと、俺は……お前とは付き合えない」その言葉を言われた時美琴を激しい後悔が襲った。告白なんてするんじゃなかった。そうすれば上条の日常の中に自分の居場所があったのに。もう戻れないと思うと涙が出てくる。この気持ちも止められないものだった。当麻「…でも」美琴は泣きながらも上条のその言葉を聞いていた。当麻「付き合えない理由ってのが美琴がまだ中学生ってことなんだよ」当麻「俺自身は美琴のことが好きだ。昨日、今日でお前に俺の気持ちを気付かされたよ」当麻「だからな、美琴さえよければ、待っててくれると上条さんは嬉しいわけで…」上条のその言葉を聞いてさっきまで美琴が抱いていた後悔は綺麗に消え、今は安心という感情が心の中で一杯になっていた。美琴「えぐっ……それ…って…グスッ…」当麻「ああ、美琴が高校生になったらって」美琴「うっ…嬉しい……けど……」当麻「ダメ…か?」美琴「ダメ……今抱きしめてくれないと」美琴のその一言で上条は力いっぱい抱きしめた。もう離さないという感じの強さだった。美琴「と、当麻、ちょっと苦しい…」当麻「あ、ごめんな」(1年も耐えられるかなぁ)美琴「当麻……」美琴は目を瞑ってちょっと上を向いて上条を待っていた。当麻「美琴…」(上条さんはやっぱり美琴が高校生になるまで待てそうにないみたいです)上条はそっと美琴の唇にキスをしたチュッと美琴「当麻…さっきわたしが高校生になるまで待つって言ってたよね?」当麻「…………」美琴「今はまだ友達ってことなのよね?」当麻「…………」美琴「当麻は女の子の友達にキス迫られたらしちゃうんだ?」当麻「そんなことはない!」美琴「わかってるわよ。ありがとう。キス…嬉しかった…」当麻「なぁ美琴、上条さんはなんか言ってること間違ったのかな……」(もう心が揺らぎそう…)美琴「さぁ?当麻が決めたことだし、でもあたしは1年間当麻にアタックしまくるつもりよ?」当麻「…………」美琴「そうだ、お風呂壊れてるけどシャワーは使えるのよね、ちょっと借りるわね」当麻「いや、ちょっと」美琴「当麻、覗いたらタダじゃすまないわよ?」当麻「…ふ、ふこ……あー!しあわせだぁぁぁああぁぁ!」 ~fin~
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とある葛藤の本能理性【バトルブレイン】 美琴は今日も深い溜息を吐いていた。その原因はすぐ隣のベッド…いや、『自分のベッド』にある。寮へと帰り、部屋のドアを開けた瞬間、美琴の目に飛び込んで来たモノは、「はぁ! はぁ! あ゛あ~、お姉様お姉様お姉様! くんかくんか! くんかくんかhshs!」ルームメイトである白井が、何故か自分のベッドの上で枕やらシーツやら毛布やらを、匂いを嗅ぎつつ抱き締めている最中の姿であった。『いつもの事』ながら、どっと疲れが出る美琴である。「……何やってんの…黒子…」「すんすんすんす………ハッ!? お、お帰りなさいですの」お帰り、とは言いつつも美琴の寝具を放そうとはしない白井。「あのね…いい加減にしないと放電する【やく】わよ」「お姉様の愛の電撃【ムチ】で文字通り身も心も焦がされるのならば、この黒子本望ですの」目がマジである。タフなドM相手では、叱ろうがお仕置きしようが通用しない。それどころか罵りの言葉を吸収し、自らのエネルギーへと変換するのだ。我々の業界ではご褒美です状態なのである。しかも厄介な事に、シカトしても「その冷たい態度も素敵ですのー!」と繋がる為、もはや対応策が無いのである。故に美琴は、今日も深い溜息を吐いているのだ。ただし一応断ってはおくが、美琴は別に白井を嫌っている訳ではない。彼女に助けられた事も一度や二度ではないし、(あくまでもルームメイトとして)パートナーだとも思っている。しかしそれを口にするとまたややこしい事になるのは分かりきっているので、敢えて言わないようにはしている。が、しかしそれはそれ。これはこれである。白井の暴走っぷりは日に日に面倒くささを増しており、美琴にとっても悩みの種だ。この前は美琴の使用済みストローを舐めようとしていたし、その前は夜中に美琴と同じベッドに忍び込もうとしていた。更にその前は美琴が寝ている隙に口付けをしようとしていた…なんて事もあるくらいだ。そろそろ本気でルームメイトを代えて欲しいと、寮監に直談判しようかと思った程である。そして今もこうして、美琴のベッドを我が物顔で占領している訳なのだ。美琴はガックリと肩を落とし、とりあえずシャワーでも浴びようと浴室に足を運ぶ。すると当たり前の様に「お背中をお流しいたしますわ!」と服を脱ぎ始める白井に、美琴はここでようやく電撃をぶっ放した。痺れながらも満足げな白井ではあるが、足止めにはなっただろう。美琴は溜息を吐きながら、ぬるめのお湯を浴びるのだった。 ◇その翌日である。昨日の様子とは打って変わって、テンションが高ぶっている美琴。正確に言えば、あくまでも顔は必死に呆れ顔を作ってはいるのだが、心の中では満面の笑みなのである。その一方で、昨日の美琴と同様に深い溜息を吐いている人物が一人、美琴と向かい合わせに座っている。それこそが美琴が上機嫌な理由でもあるのだが。「はああぁ……終わらねー…休みてー…寝てー………不幸だー…」上条である。彼は左手で頭をガリガリかきながら、右手で目の前の問の答えをガリガリ書いている。本日はゴールデンウィーク最終日。だが彼には黄金な週間など一日も無く、補習・課題・宿題・小論文・感想文の毎日を送っていた。小萌先生の頑張りで、もう一度一年生を送る事はなくなったのだが、その代償も大きかったのだ。しかし最終日だと言うのに、彼のテーブルの上には真っ白な宿題の山。そこで年下(しかも中学生)に教えを請うという恥を忍んで、美琴に手伝ってもらっている。勉強の事ならば、学園都市でも最高の演算能力を持つレベル5に聞くのが一番だし、レベル5の中でも最も気安く仲が良いのは美琴である事も上条は自覚している。ちなみに現在、インデックス・オティヌス・スフィンクスの「○○ス」三人組はここにはいない。彼女達(スフィンクスは雄だが)がいると絶対に宿題に身が入らないし、美琴とインデックスは、何故か顔を合わせれば小競り合いが始まるからだ。ナンデカナー。と長々と説明した訳だが、つまり何が言いたいかと言うとだ。上条と美琴は今、部屋の中で二人っきりだという事だ。上条は視線を問題集に釘付けにしたまま、テーブルを挟んで向かい側の美琴に質問する。どうやら今は、数学の時間らしい。「あのー、美琴センセー? ここが分からないんですけどー…」「全く仕方ないわねアンタは。ほら、さっきやった公式を当てはめれば簡単でしょ? こうすると…ね? yの値が出てくるから後は」「あー、あー。なるほどね。サンクス、ミコっちゃん」「べ、別に大した事じゃないし! 勘違いするんじゃないわよ! ただアンタから頼りにされるのが嬉しいだけなんだからねっ!」嬉しすぎて、ツンデレ具合もこじれる美琴である。緩んで落ちそうになる頬を頑張って引き上げてはいるが、気を抜くとすぐにでもニマニマしてしまいそうになる。と、そんな時だ。上条が急に立ち上がった。「…? どしたの?」「悪ぃ。ちょっとトイレ。……ジュース飲みすぎたのかも」テーブルの上には勉強道具の他にも、ストローが刺さったコップが二つある。勿論、上条の分と美琴の分だ。中には安物のオレンジジュースが注がれているのだが、大量の宿題を片付けているとやたらと喉が渇き、上条はゴクゴクと飲んでしまっていたのだ。トイレが近くなるのも当然の事である。上条がお花を摘む【ようをたす】姿を不覚にも想像してしまい、ボンッ!と音を立てて、勝手に顔を爆発させる美琴。「わ、分かったから早く行ってきなさいよ馬鹿! わざわざ言わなくてもいいから!」上条は「えー? そっちが『どしたの?』って聞いてきたんじゃんかー」と不満を漏らしつつも、オシッコまで漏らす訳にはいかないので、そそくさとトイレに駆け込む。 さて、ここからがある意味本番である。上条の暮らしている空間で、一人っきりになってしまった美琴。ここで彼女の中で、悪魔が囁いたのだ。美琴の目の前には、先程まで上条が座っていたペラッペラの座布団が一枚ある。無意識なのか意識的なのか、美琴はごく自然にその座布団を手に取っていた。(……あ…まだ温かい…)座布団には、まだ上条の体温がほんのりと残っており、その温みが手からじんわりと伝わってくる。何だろう。とてもイケナイ事をしている気がするのだが、その思いとは反比例して、心臓はもの凄くドキドキしてくる。美琴は頭をポーっとさせながら、その座布団をギュッと抱き締めて、そして、「………すん…」匂いを嗅いだのだ。だが頭をポワポワさせたまま、「…アイツの匂いがすりゅ~……」などと感想を漏らした瞬間、彼女はハッと我に返った。「って!!! ななな何やってんのよ私はっ!!! こ、ここ、これじゃあ昨日の黒子と一緒じゃないのよっ!!!」今更である。出来れば座布団を手に取った所で気付いてほしかった物だ。しかも先程までケツが乗っかっていた物【ざぶとん】のスメルを堪能するとか、寝具で楽しんでいた白井よりも遥かに上級者である。しかし、そんな事は言いつつも、自分の座っていた座布団と上条が座っていた座布団を、『しっかり』と入れ替える美琴。だが悪魔の囁きはそれで終わりではなかった。自分が白井と同じような事をした事で、今までの白井の奇行が頭の中でフラッシュバックしてくる。(……そう言えば…黒子【あのこ】、私のストローを舐めたりもしてたわね…)既に説明した通り、テーブルの上には上条の飲みかけのジュースのコップと、そこに刺さったストローがある。先程まで上条が口にしていたストローが。「ま、ままままたお手洗いが近くなっても可哀想だし!!! わ、わ、私がチョロっとアイツの分のジュースを飲んであげようかしら!!?」無茶苦茶な言い訳を自分自身に言い聞かし、美琴は上条のコップに手を取る。いいのかそれで。しかし美琴はそのまま止まる事なく、「はむっ」とストローを口にくわえた。その瞬間、「何してんの?」「にゃあああああああああああああ!!!!!」トイレから戻った上条に声を掛けられビクゥッ!としてしまった。男の小便など手を洗う時間を入れても、ものの数十秒で完了するのだ。逆に言えば数十秒という短い時間で美琴は、上条の座布団を抱き締め、匂いを嗅ぎ、自分の座布団と入れ替え、言い訳をして、ストローを口にくわえた事にもなるが。どんだけだよ。美琴の様子がおかしいようにも見えたが、そんなのは『いつもの事』なので、あまり気にせずに宿題の続きを再開する上条。自分のジュースのストローに美琴の口が付いた事にも、自分の座布団が美琴の座布団と入れ替わっている事にも気付かずに。 ◇それから数十分。今は国語の宿題に取り掛かっている上条なのだが、「だぁ~もう! 『この時の私の気持ちを説明せよ』とか言われても知るかよ! そんな事、夏目漱石【これかいたひと】本人に聞けよ!」身も蓋もない事を叫びながら嘆いていた。対して、「く、口を動かす前に手を動かしなさいよ!」と注意をする美琴ではあるのだが、下に敷いた座布団が気になり、どうにも据わりが悪くモジモジとしてしまう。自分で取り替えたクセに。だがそんな事を知る訳もない上条は、シャーペンを放り投げてベッドに横になってしまう。ちなみにこのベッド、普段はインデックスが使っている物である。「ちょ、アンタ! 何してんのよ! まだ宿題こんなにあるのよっ!?」「いやダメだ…すげー眠くて集中できねー……昨日も課題やってて、ろくに寝てなかったし… 悪い、30分だけ寝かせてくれ…起きたら続き…やる……か…ら…………くかー」勝手な言い分だけ言うと、上条は光の速さで眠りに就いた。美琴は「ったく、もう…」と呆れながらも、上条に毛布をかけてあげる。何だかんだ言いつつも、上条には甘いようだ。惚れた弱みという奴なのかも知れない。30分経ったら上条を起こすとして、それまで暇になってしまった美琴。とりあえず部屋の中にある漫画本でも読んで時間を潰そうかと思った瞬間である。美琴の脳内に、本日三度目となる悪魔の囁き。(そう言えば……黒子ってば、夜中に私のベッドに忍び込もうとした時もあったのよね…)再び白井の奇行がフラッシュバック。そして目の前には、無防備な姿で仮眠を取る上条の姿。寝息を立てて、可愛らしい寝顔(美琴談)で眠りこけているその様子から、ちょっとやそっとじゃあ起きないであろう事が窺える。美琴はそこで何を閃いたか、言わなくてもお察し頂けるだろう。「そ、そう言えばこんな所で寝ちゃったら風邪引いちゃうわよねー!!! こっ、こ、こうなったら、ひ、ひひと、ひと、人肌で温めてあげた方がいいのかしらっ!!?」またも無茶苦茶な言い訳を独り言でぶちかます。もう5月に入り春真っ只中であり、周りの空気は寒さとは無縁で温める必要もないだろうし、そもそも『こんな所で』も何も、上条が横になっているのはベッドの上だ。ベッドの上で寝たら風邪を引くと言うのなら、人は一体どこで寝ればいいと言うのか。と、そんなツッコミを入れる者など、この場にいる訳もなく、美琴はいそいそと上条のベッドに潜り込む。白井と全く同じ事をしていると思うと複雑ではあるのだが、これはあくまでも上条が風邪を引かないようにする為の予防処置()なのだと割り切る。美琴には大義名分()があるのである。仕方ない()のである。セーフ()である。「ふぉ…ふおおおおおぉぉぉぉ………」自分でやっておきながら、美琴はいざ上条の隣で横になってみると、今更恥ずかしさのあまりワナワナと震えてきた。目と鼻の先には上条の背中があり、少し手を伸ばせば思いっきり抱きつく事も可能である。しかし羞恥心やら背徳感やら罪悪感やら理性やらがそれを塞き止め、美琴を硬直したままの状態にしていた。 ここまでやったのだ。もういいだろう。普段の自分では絶対にできないような経験を、思う存分楽しんだではないか。白井の事を棚上げして、自分もこんな事をしては、彼女にも申し訳が立たない。美琴はそんな事を思い、ベッドから立ち上がろうとする。しかしその時、事件が起きた。「んっ…んー……むにゃ…」「っ!!!?」ゴロン、と寝返りを打ち、上条がこちらを向いてきたのだ。先程まで背中だった眼前は、くるりと回って上条の胸元が現れる。そしてほんの少し顔を見上げれば、「すーすー」と寝息を立てる上条の寝顔。しかも美琴の顔との距離は、わずか数㎝だ。それはちょっとだけ首を伸ばせば、お互いの唇と唇がぶつかってしまう距離だった。美琴は再度思い出した。(く…黒子……私が寝てる隙に、キ…キキ、キス……とかもしようとしてた…のよね…)心臓はバックンバックンであった。もしも今から、頭に過ぎった『その行為』を自分がしてしまったらと思うと、顔が沸騰しそうになる。だが流石にそれはマズいだろうという認識はあるらしく、美琴は思い留まった。美琴は絶賛熟睡中の上条に語りかける。『何故か』小声で。「あ…あー、そろそろ起きなさいよ。もうすぐ30分経つんだから」いつの間にか、あれから25分程が経とうとしていた。随分と長い時間、ベッドの上でお楽しみだったようだ。しかし上条は起きる様子がない。小声なのだから当然である。「お……おお、おき、おき、起きない…と、キ…キキキキスっ!!! しちゃうわよ!?」訂正しよう。美琴は思い留まっていなかった。始めから上条が眠っている間に、口付けをする気満々だったのだ。小声だったのも、本気で起こす気がなかったからである。ここで上条が起きてしまったら、口付けをするチャンスもなくなってしまう。「お、おお、起き…ないの…? ホホ、ホントにしちゃう…わよ…? も、もう遅いんだからね! 私は何があっても知らないんだからっ!」何があってもと言われても、だったら大声で上条を叩き起こせばいいし、そもそも「起きないとキス云々」というのも美琴発信な訳で、嫌なら止めれば良いだけなのだが。しかし夢の外【げんじつせかい】の自分周りでそんな事が繰り広げられているなど知る由も無い上条は、「んー……いいから…美琴…早く………むにゃ…」と寝言をほざくのだった。その一言が美琴の引き金を引くなど、知りもしないで。 ◇「…………あれ?」上条が目覚めると、既に3時間が経過していた。仮眠の筈が、本眠りへと突入していたようだ。「えっ……えええええええええっ!!? な、何で美琴は起こしてくれなかったんだ!? いやそれ以前に、何で美琴センセーも俺と一緒に寝てんのーっ!!?」上条の隣には、気持ち良さそうに寝ている【きぜつしている】美琴の姿。残されたのは、終わっていない宿題とベッド周りの謎の焦げ【ふにゃー】跡。そして微かに感じる、唇の柔らかい感触だけだった。